宮古島陸上自衛隊配備計画 島民のリアルな反応は?

2019年、宮古島に陸上自衛隊の基地が完成します。警備部隊、地対艦ミサイル部隊、地対空ミサイル部隊が配備され、PAC3が常時配置されます。

私が移住してからの5年間、宮古島では陸上自衛隊配備を巡るめまぐるしい動きがありました。島内には、自衛隊配備に賛成の人もいれば、反対の人もいます。

防衛省の配備計画、賛成派・反対派の主張、配備による住民生活への影響について、中立的な立場からまとめました。

自衛隊と宮古島の関わり

宮古島には航空自衛隊の基地があります。基地は1972年の沖縄本土復帰に伴い米軍から自衛隊が引き継ぎました。

基地といっても、戦闘機が配置されているわけでも、滑走路があるわけでもありません。基地は宮古空港から車で10分ほどの上野野原という場所にあり、レーダーによる監視部隊が配備されています。

レーダーは24時間体制で日本の領海を監視していて、他国の戦闘機やミサイルなどによる脅威に備えています。領空侵犯が確認されれば、那覇空港から航空自衛隊の戦闘機が緊急発進します。

存在感のない自衛隊

宮古島に移住して5年の私。普段の生活の中で、航空自衛隊との関わりはほとんどありません。基地の近くに行けばレーダー施設が目に入りますが、市街地エリアで生活している限り自衛隊の存在感はとても小さいです。

週に数回ヘリコプターの離着陸があり、基地の近くの住民の中には騒音が気になるという人もいます。毎年秋には基地内で「観月会」が開催されています。宮古島の重鎮や基地に近い自治会の人たちが招かれます。招待者はビールを飲みながら、舞台で繰り広げられる隊員の余興を楽しみます。

レーダーの電磁波による健康被害

航空自衛隊のレーダーによる電磁波が健康被害をもたらすのではないかと抗議運動が展開された時期がありました。研究者が基地周辺で電磁波を測定し、他の場所よりも数値が高いというデータを公表したことから、一時期、一部で抗議の声があがりました。抗議運動はそれほど広がらず現在は終息しています。

航空自衛隊員の生活

航空自衛隊の隊員の中には、基地内の寮に暮らす人もいれば、基地外で暮らす人もいます。以前、航空自衛隊の隊員が同じアパートに暮らしていました。灰色っぽい迷彩服姿で朝7時頃出勤し翌朝9時ごろ帰ってくることが多かったです。

自衛隊員は独身だと寮生活が基本で、結婚することで基地外での暮らしが許されるようです。

航空自衛隊がある上野野原の近くには上野小学校、上野中学校があります。小学校、中学校とも1学年30人ほどの小さな学校です。自衛隊員の子供も在籍していますが、各学年に数人いるかいないかという程度です。

自衛隊の音楽隊による演奏会

宮古島では毎年、自衛隊の音楽隊による演奏会が開催されています。普段なかなかレベルの高い音楽に触れることが少ないので、楽しみにしている市民も多いですが、自衛隊の宣撫活動だとして抗議している住民もいます。

演奏会は宮古島で一番大きいホール、マティダ市民劇場で行われます。演奏会のために隊員約50人が島外からやってきます。劇場の約900席は毎回満席になります。

陸上自衛隊配備計画

2019年、宮古島に陸上自衛隊の基地が完成。陸上自衛隊の警備部隊、地対空ミサイル部隊、地対艦ミサイル部隊が配備されます。隊員数は約800人です。

地対空ミサイルとは「PAC3」に代表されるようなミサイル迎撃弾。「宮古島への陸上自衛隊配備」を簡単に言いかえると「宮古島にPAC3を常時配置する」ということです。

防衛省では宮古島への陸上自衛隊配備の理由を「南西諸島の防衛力強化」としています

基地は2ヶ所

自衛隊の基地は島内2ヶ所に作られます。航空自衛隊の基地に近い「上野千代田」と、東平安名崎近くの「城辺保良」の2ヶ所です。

上野千代田の基地はゴルフ場(千代田カントリークラブ)の跡地。官舎、訓練場、車両整備場などが配置されます。宮古島・石垣島・与那国島の陸上自衛隊を統括する司令部も置かれることになっています。

宮古空港から市街地と反対方向に車で10分ほどの場所です。市街地と郡部をつなぐ幹線道路沿いにあります。市街地に住んでいるとほとんど使わない道です。田舎に住んでいる人が市街地に出る時に使う道で、交通量は多いです。

島の南側に広がる宮古島最大のリゾートエリア「シギラリゾート」に空港から向かう場合、この道を通ります。シギラリゾートのシャトルバスやレンタカーもよく通る道です。

城辺保良の基地は鉱山(保良鉱山)の跡地。弾薬庫として使用されます。

鉱山といっても山ではなく、大量の土砂が搬出され、大きなくぼみになっています。島の一周道路沿いにあり、宮古島を代表する景勝地、東平安名崎から約3キロの場所にあるので、レンタカーがよく通ります。

入口が小さくわかりにくいので、近くを通ってもどこに鉱山があるのか全くわかりません。

基地外への展開

他国のミサイル発射の動きを把握すれば、PAC3部隊を基地外に展開することも考えられます。

北朝鮮のミサイル発射の動きに備え、宮古島には過去に3回PAC3部隊が配備されたことがあります。

このうち2回は上野野原の航空自衛隊の基地に配置されましたが、2016年には市街地から近いトゥリバー地区に配置されました。

配備地の自治会の動き

配備地がある千代田自治会、千代田に隣接する野原自治会は、当初は自治会の総会で配備反対を決議し配備に反対していました。工事が始まり、配備が現実的に目に見えるようになると、反対決議を撤回しました。

反対決議撤回後は防衛省に周辺整備を要求しています。「基地を配備するなら地元自治会に貢献するように」という考えです。

保良鉱山のある保良自治会は、自治会の総会で配備反対を決議しました。

保良には配備賛成の住民もいます。配備賛成の住民は市民団体を立ち上げ、防衛省に周辺整備を要求しています。自治会にも同調するよう求めましたが、反対決議撤回には至っていません。

保良に隣接する七又自治会は、配備に反対を決議しています。

島民の反応

島内には陸上自衛隊賛成派もいれば反対派もいます。関心がない人も多いです。

賛成派は、自衛隊員とその家族が来ることにより、島の人口が増加し、島の経済が発展すると主張しています。

反対派は、自衛隊の基地ができれば、基地が標的になり、宮古島が戦場になりかねないと主張しています。

賛成派には地元の経済界や建設業者の代表が多いです。反対派には地元の人もいますが、移住者も多いです。

賛成派でも反対派でもない人も多いです。中立的な考えを持っているというよりは「関心がない」という人たちが多いです。

宮古島の人たちの気質は「来るもの拒まず去る者追わず」「お尻に火がつくまで気づかず、おしりに火がついてから騒ぎ出す」という感じ。基地建設工事が始まっても、特に興味はない、気にしないというのんびりした人たちも多いです。

反対運動の広がり

宮古島では「止めよう自衛隊配備宮古群民の会」「てぃだの子島のこの平和な未来を作る会」など、いくつかの市民団体が反対運動をしています。

防衛省が宮古島で陸上自衛隊配備計画の説明会を開くたびに、抗議の声を上げ、説明会が紛糾したこともありました。基地の着工日には、起工式が行われた場所の近くで抗議運動をしていました。工事中もゲート前で「自衛隊反対」の旗を掲げて抗議の声をあげています。

平日の午後5時頃からは、毎日のように宮古島市役所の前で「自衛隊反対」と書かれたプラカードを手に、抗議の姿勢を示しています。拡声器で大きな声を出したりすることはなく、静かに抗議活動をしているので、特に迷惑に感じることはありません。

反対運動で計画変更

宮古島では、こうした反対運動が、陸上自衛隊配備計画を変更させた経緯があります。防衛省は当初、上野千代田と平良福山の2ヶ所に基地を配置する計画でした。

平良福山が宮古島の水源地に近いことから反対派は熱心に抗議運動を行いました。宮古島には川がなく、上水道は全て地下水を浄化したものです。「地下水」をキーワードに反対運動を繰り広げたことで、反対派ではない住民にも反対の声が広がり始め、防衛省が計画の変更を余儀なくされました。

防衛省は平良福山への配備計画を撤回しましたが、福山に代わる代替地を示しませんでした。上野千代田の住民たちは弾薬庫も含めたすべての機能が千代田に集約されることを懸念していましたが、後日、福山の代替地として城辺保良が示されました。

反対派よりは賛成派が多い

沖縄の選挙では「保守」「革新」という言葉が使われます。米軍普天間基地の名護市辺野古移設に賛成の人が保守、反対の人が革新です。

宮古島では、保守系は陸上自衛隊配備に賛成していて、革新系は反対しているという構図です。

沖縄県の中でも、宮古島は保守王国と言われています。宮古島市長の下地敏彦氏は保守派、市議会議員も24人のうち18人は保守系です。

宮古島への陸上自衛隊配備で世論が2分されていた2017年1月に宮古島市長選挙があり、保守系で自衛隊配備賛成の立場を明確にしていた下地敏彦氏が3期目の当選を果たしました。

選挙には保守系から2人、革新系から2人の4人が立候補。保守系の下地敏彦氏と真栄城徳彦氏を合わせた票数は約16,000票で、革新系2人の13,000票を上回りました。

2018年に行われた沖縄県知事選挙でも、宮古島では保守票が革新票を上回りました。

宮古島の未来はどうなる

宮古島に陸上自衛隊が来ることで、島の未来はどうなるのか。経済、観光、住民生活面への影響です。

経済面

自衛隊賛成派は、陸上自衛隊が来ることで宮古島の経済が活性化すると主張しています。

観光客の宮古島のイメージは「リゾート地」ですが、移住者の私が宮古島に5年間住んで感じるイメージは、良くも悪くも古い考え方が残る「田舎」

島の重鎮たちは、建設業界が儲かれば島の経済が活性化するといういかにも田舎らしい考えを持っています。リゾートホテルでも、陸上自衛隊でも、経済発展につながりそうなものなら何でも受け入れます。

宮古島の人口は54,000人。人口増加が続く沖縄県の中で、宮古島は人口減少が目立つ地域です。陸上自衛隊が来ることで、隊員とその家族を合わせれば1,000人以上、人口が増えることになります。

一般論としては、人口増加は経済活性化につながりますが、賛成派の人たちも「どの程度の経済効果があるかは来てみないとわからない」と言うのが本音です。

観光面

ここ数年宮古島は観光客が急増しています。年間の観光客数は長らく40万人台で推移していましたが、2015年に50万人、2016年に70万人を突破。2017年には99万人を記録し、2018年は100万人突破が確実視されています。

陸上自衛隊の基地ができても、観光面への悪影響はあまり考えられません。米軍基地問題に揺れる沖縄本島でさえ観光客は増え続けています。以前宮古島にPAC3が配備された時も、観光客数に影響はありませんでした。

「自衛隊」や「基地」などという言葉の響きは観光客に敬遠されそうな気もしますが、多くの観光客は宮古島に自衛隊基地があることなど知らないまま宮古島に来て、知らないまま帰っていきます。

住民生活への影響

宮古島住民にとって、陸上自衛隊が来ることによる一番大きな影響は、賃貸空き物件がさらになくなること。

宮古島はアパート・マンションなどの賃貸空き物件がない異常事態。2018年10月時点で、どの不動産屋に問い合わせても賃貸空き物件は1件もありません。「70人待ち」と言われた人もいれば「2年待ち」と言われた人もいます。

宮古島では大型公共工事や大型リゾートホテルの建設が相次いで行われていて、建設業者が賃貸物件の多くを抑えています。ホテル業者やリゾートバイトの受け入れ企業も従業員用の寮としてアパートの部屋を確保しています。

完成前のアパートの部屋も全て埋まっているような状況です。実家暮らしをやめて一人暮らしを始めようとしても、住めるアパートがありません。移住先として人気の宮古島ですが、部屋が見つからず移住を先延ばししている人もいます。

陸上自衛隊の基地が完成すれば約800人の隊員とその家族が宮古島にやってきます。賃貸空き物件不足に拍車がかかるのは目に見えています。あまりに賃貸物件がないので、防衛省が既に多くの部屋を抑えているのではないかという噂もあります。

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まとめ

宮古島への陸上自衛隊配備計画、賛成派・反対派の主張、住民生活への影響などを中立的な立場からまとめてみました。

陸上自衛隊の配備で島がどのように変わっていくのか。宮古島での穏やかな暮らしに憧れれて移住した私としては、今後も気になるテーマです。

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