宮古島バブルと言われる好景気の島で最近みられるようになってきた「家賃の便乗値上げ問題」
大家が一方的に家賃の値上げを迫るもので「翌月から4万円値上げ」などという悪質なケースもみられるようになりました。
沖縄の離島という特殊な環境の宮古島。賃貸空き物件がない異常事態なので、部屋を追い出されれば、住む場所はありません。
給料は上がらないのに、家賃が上がる悲劇。家賃の値上げは、移住者にとっても死活問題です。
家賃が上がる理由
宮古島は、賃貸空き物件のない異常事態。
賃貸物件が不足する状態は2016年頃からみられるようになりました。2019年現在、賃貸空き物件は全くありません。たまに不動産屋のホームページで紹介されるのは、「1DK10万円」など、相場を大きく上回る家賃を設定した物件。一般人には手が出ませんが、借りる人がいるので驚きです。
賃貸空き物件不足をもたらしているのは「宮古島バブル」と言われる好景気。宮古島は今、これまでにない建設ラッシュ。下地島空港の新ターミナルや陸上自衛隊新基地、リゾートホテル、民間アパート、公共施設の建設が同時並行で行われていて、島内の建設業はパンク状態。
島外からの労働者受け入れのため、建設業者は多くの賃貸物件をおさえています。新しいホテルも次々に開業。ホテル業者も島外から働き手を確保していて、従業員を賃貸物件に住ませるケースが増えています。
宮古島は人口5万4000人の小さな島。部屋を借りたい人が極端に増えた結果、賃貸空き物件が全くない異常事態となりました。
この流れに便乗して一部の大家が家賃の値上げを迫っています。空き物件がないので値上げを断れないだろうと、大家は強気に出ています。
悪質なケースも
家賃の上げ幅は様々。2千円と少額のものから、4万円値上げするという悪質なものまで。私が聞いた中で一番悪質なケースは家賃4万円を翌月から8万円にするというもの。どう考えても非常識です。
沖縄県の給与水準は全国平均の3分の2といわれています。宮古島はそれをさらに下回ります。30代正社員の基本給が10万円台なんてことも普通にあります。
一方で、宮古島の家賃相場はバブルになる前から高いです。家賃相場は福岡と同額ぐらい。1DKで3~4万円。3LDKで5~6万円が相場です。
給料は低いのに、家賃は高い。ただでさえ大変なのに、家賃を値上げされたら、生活はかなり苦しくなります。
大家と借主の賃貸契約は、2年に1度が契約更新の時期になっている場合が多いです。契約更新の時期に値上げを迫るならまだしも、更新の時期に関わらず、「来月から家賃を3万円値上げする」と一方的に通告されるケースもあります。
私の住むアパートも2019年3月に家賃値上げの通知が来ました。アパートを管理するのは宮古島最大の不動産会社「アパマンショップ・住宅情報センター」から、何の前触れもなく家賃値上げを通知する文書が郵送されてきました。
島内では「あそこの不動産屋は値上げに積極的。あそこは値上げしない」という噂話が絶えません。
値上げは断れるのか
部屋を借りたい人はたくさんいるので「家賃値上げを断るなら出て行ってくれ」と大家は強気に出てきます。
家賃の値上げには貸主、借主、双方の合意が必要となっています。貸主は法律上「土地、建物の税金の増額」「経済事情の変動」「周辺の相場に見合わない」などの条件を満たす場合に値上げを請求することができます。
宮古島の家賃値上げの場合、法律上の条件は知らないまま、賃貸空き物件不足に便乗して大家が値上げを迫るケースが大半です。
宮古島バブルと言われる今、宮古島のアパートは値上げの条件を満たしているのでしょうか。
土地、建物の税金の増額
国土交通省が公表する地価、国税庁が公表する路線価が土地取引の目安となります。土地や建物の所有者が支払う税金(固定資産税)は地価、路線価をもとに算出されます。
地価、路線価は毎年公表されます。宮古島の地価、路線価が極端に高くなっているわけではありません。
宮古島では、地価、路線価とも、1990年代初頭のバブル崩壊以降、減少か横ばいが続いていました。2017年頃からわずかに増加に転じましたが、固定資産税が大幅に高くなるほどの変化ではありません。
宮古島の地価の最高値の変遷
2011年 89,000円
2012年 86,000円
2013年 85,000円
2014年 84,000円
2015年 84,000円
2016年 84,000円
2017年 85,000円
2018年 88,000円
(国土交通省ホームページより)
土地、建物の税金の増額は家賃値上げの理由にはなりません。
経済事情の変動
宮古島バブルと言われる今、宮古島の有効求人倍率は県平均、全国平均を上回っています。2019年2月の有効求人倍率は1.95倍です。
島には求人情報が溢れていて、仕事を選ばなければ誰でも就職できるような状況。アルバイトの時給も数年前までは750円~800円が相場でしたが、今では時給1000円の求人も見かけるようになりました。
経済が好調なのは間違いないですが、企業の正社員・契約社員の給与には反映されていません。好景気で給料が上がったという話は全く聞きません。経営者は儲かっていますが、従業員の給料に変化はなし。
経済事情は変動していますが、一時的なものという見方が強く、これだけを家賃値上げの理由にするのは少々乱暴です。
周辺の相場に見合わない
宮古島の本来の家賃相場は、1DKで3~4万円台。3LDKで5~6万円台です。値上げを迫っているアパート経営者の大半はこの家賃相場を上回る金額を要求しています。
宮古島で値上げされているアパートで「周辺の相場に見合わない」という条件を満たしているところはほとんどありません。
最近では、相場を極端に上回る物件が目立つようになっています。特に新築アパートの家賃は驚くほど高く、1DKで10万円などという物件も出てきています。
家賃相場自体が引き上げられつつあるという見方もできますが、家賃値上げの条件を満たすほどではありません。
今後の見通し
2019年3月に、下地島空港新ターミナル建設、自衛隊基地建設の2つの大型工事が完成しました。大型工事が完成しても建設作業員は減りません。島内では同時多発的にリゾートホテル建設が行われています。
下地島空港新ターミナル、自衛隊基地の完成に伴い、空港で働く人や自衛隊員が大量に宮古島に入ってきました。特に自衛隊員の増加は宮古島の人口急増をもたらしました。
宮古島に入ってきた隊員は700~800人。家族も含めれば1000人以上です。基地内にも宿舎は整備されますが、基地外のアパートにも隊員と家族が住んでいます。自衛隊も隊員のための部屋探しを進めていて、自衛隊が多くのアパートの部屋を抑えているという噂もあります。
賃貸空き物件不足、家賃の値上がりはいつまで続くのか。最新情報も含めこちらの記事にまとめました。