宮古島移住者のshimagurashiです。
緊急事態宣言が解除された宮古島。砂山ビーチや前浜ビーチなどの利用制限も解除され、自由に出入りできるようになりました。
緊急事態宣言中は宮古島でもほとんどの人がステイホームしていました。公園にもビーチにも行かずに過ごした1ヶ月。
移住5年になり「ビーチに行きたい」「海に行きたい」とは思わなくなりましたが、1ヶ月ほど自粛生活をしたことで、久しぶりに「海に行きたい」との衝動にかられました。
緊急事態宣言解除直後。誰もいない砂山ビーチはこれまでで最高の美しさでした。
がっつり梅雨入りしている宮古島。
とはいえ、宮古島の梅雨は気まぐれ。
晴れたり、曇ったり、雨が降ったり、また晴れたり。
この日は台風1号が最接近する予報だったものの、台風は熱帯低気圧に変わり、早朝の大雨からのピーカン照り。
宮古島移住生活にどっぷりつかり、島の人の考え方に染まりつつある私。普段なら、こんな暑い日の暑い時間帯に海には行かない。
宮古島の梅雨は本当に暑い。夏よりも梅雨の方が暑くて不快。
湿度が高く、じめじめと暑い。汗が大量に出るものの、湿度が高いので汗が気持ちよくは出ない。
吹き出たくても吹き出せない。汗まで外出自粛してるのかしら。
お昼頃、車を走らせ砂山ビーチへ。
市街地からも近い砂山ビーチまでは自宅から車で15分ほど。
前浜ビーチと並ぶ、宮古島の2大ビーチ、砂山ビーチ。格別の美しさだが、地元の人はほとんど行かない。
私も砂山ビーチは1年ぶりぐらい。
久しぶりに観光地に向かう車の中で、違和感に気づく。
車と、全くすれ違わない。
普段は観光地に近づくと対向車が増える。渋滞とまではいかないけれど、何台か車が連なるのは良くある光景。
ところが、この日は全く車とすれ違わない。
自宅から砂山ビーチに着くまで、レンタカーとは1台もすれ違わなかった気がする。
ここまで観光客がいない宮古島は初めて。というか、統計では30年前までさかのぼってもこれほど観光客が少なかった時期はないらしい。
観光業者の皆さんは大変だが、観光地に向かってドライブする私の車は快適に走る。
砂山ビーチ駐車場に到着。ここにも車が全く止まっていない。
お昼なのに、車が止まっていない。こんな砂山ビーチ、オフシーズンの冬でもめったに見ない。
人がいなすぎて、異世界に迷い込んだような感覚。
ビーチにつながる砂道の入り口にいつも止まっていたパーラーは、移動販売車そのものがいなくなっていた。
誰もいない砂道を歩き、ビーチを目指す。
セミの声、ハチの羽音。遠くで聞こえる波の音。
いつもなら人間の声にかき消される自然の声が聞こえてくる。
宮古島ではもうセミがジージー鳴いているのだ。
砂山ビーチの醍醐味は、ビーチへのアプローチの砂道。
砂の山を上りきると、眼下にエメラルドグリーンの海が広がる。
砂道でも誰ともすれ違わない。上り坂の先に見えるのは青空。坂を登りきれば、海が見える。
暑さも忘れて、海を目指す。久しぶりにワクワクした気持ちで海を目指す。宮古島旅行に来ていた頃の気持ち、移住したての頃の気持ちを少し思い出す。
砂山を上ると、今までで最も美しい砂山ビーチが姿を現した。
砂山ビーチには何度も来ているけれど、こんなにも美しい海は見たことがない。
ビーチには誰もいない、エメラルドグリーンの海はとても澄んでいて、サンゴ礁の1つ1つがくっきり見えるようだ。
太陽の日差しを浴びて、水面はキラキラと輝いていた。
サンダルを脱ぎすて、砂の山を駆け下りるようにビーチへ。
波打ち際の近くまで来て、あることに気づく。
ビーチに足跡がない。
もしかして、午前中誰も来なかった?
砂の上に残るのは、私の足跡だけ。
ほかに足跡はない。
私の足跡まで消してしまいたいと思うが、時すでに遅し。
気がつくと、夢中で写真を撮り続けていた。
ビーチに下りて5分ほど。ビーチには誰も降りてこない。
砂山ビーチと私だけの特別な時間。
こんな経験は、あとにも先にもないだろう。
実は、この日は台風の予報だった。
台風1号が熱帯低気圧に変わり、勢力が弱まって、空は晴れた。
観光客にはあまり知られていないが、宮古島の海が最も美しいのは台風が通過した直後。
台風一過の青空の日は空気が澄んでいて海がきれいに見える。
この日は早朝の大雨で空気が澄み、海を見るにはベストなコンディションだった。
宮古島の神様、ありがとう。
駐車場に戻る途中、1組のカップルとすれ違う。
移住者かな?観光客かな?などと考えているうちに、現実が戻ってくる。
ビーチにぽつんと1人でいた5分間。私はまるで異世界に迷い込んだようだった。
この日の砂山ビーチは非日常の場所だった。
宮古島での移住生活が長くなると、島の全てが日常になり、島で非日常を感じることはなくなる。
非日常を感じるためには、島外に出るしかない。
宮古島に移住した私は、砂山ビーチで非日常を感じることは一生ないはずだった。
外出自粛期間が長かったからこそ、砂山ビーチで感じた非日常。
ステイホームを頑張ったご褒美かしら。
帰り道の車の中、やっぱり汗が止まらない。
暑い。暑い。暑い。車のエアコンは壊れている。
窓を開けても暑い。
ここで宮古島の気候に不満を言うようでは移住生活はうまくいかない。
受け入れること、耐えること、感謝すること。
宮古島移住者は傲慢になってはいけない。
自分にそう言いきかせながら自宅へ戻る。
自宅から砂山ビーチまで往復しても30分。
とても贅沢な環境だが、普段はビーチに行こうとは思わない。
「地に足をつけて暮らす」とはそういうことなのかもしれない。