海に囲まれた宮古島。過去には地震・津波で大きな被害が出ています。
地元の人にも、観光客にも、移住者にもほとんど知られていませんが、東日本大震災後、沖縄県が地震・津波による被害想定を改めました。
より大きな地震を想定したことで、想定される死者数、負傷者数はかなり多くなりました。
宮古島の近海で海溝型の巨大地震が発生した場合、宮古島では最大で死者371人、負傷者3,685人が想定されています。
宮古島の全人口は約5万4000人。150人に1人が亡くなり、15人に1人がけがをすることになります。
最も高いところでも標高115mの宮古島。海沿いにはリゾートホテルも多く、住民だけでなく観光客の被害が心配されます。
宮古島に大きな被害をもたらすと想定されているのは「宮古島断層による地震」「宮古島スラブ内地震」「宮古島南東沖3連動地震」の3パターン。
それぞれの地震が発生した場合の建物被害や人的被害の想定をまとめました。
※記事内に出てくる被害想定は沖縄県が実施した調査に基づくものです。
沖縄県地震被害想定調査
沖縄県津波浸水想定
宮古島断層による地震
宮古島には断層がたくさんあります。断層は島の北西方向から南東方向に向かって走っています。
飛行機で宮古島に着陸するときに、島を上空から眺めると、峰のように標高が高くなっているラインがいくつか確認できます。これが「宮古島断層」です。
宮古島断層による直下型地震で、宮古島では最大震度6強の揺れが想定されています。
被害想定
宮古島断層による地震の被害想定です。
最大マグニチュード 7.3
宮古島での最大震度 6強
建物全壊:2,648戸
建物半壊:4,072戸
死者:26人
負傷者:1,184人(重傷者263人)
断水:23,652戸
停電:7,081戸
想定される3つの地震の中では、建物の全壊、半壊戸数が最も多い。
津波の発生はなく、建物被害は揺れ、液状化、火災によるもの。
死者26人は建物倒壊によるもの。
断水は1週間後も13,666戸。影響が長引く。
停電は1日後には538戸に減る。
宮古島スラブ内地震
スラブ内地震とは、海洋性プレートの曲がったところが破断することによって起こる地震。(東日本大震災のようなプレートの境界面が大きくずれる海溝型地震ではありません)
「宮古島スラブ内地震」は平成25年度に新たに沖縄県の調査対象となり、被害想定がまとめられました。
被害想定
宮古島スラブ内地震による地震の被害想定。
最大マグニチュード:7.8
宮古島での最大震度:6強
建物全壊:1,959戸
建物半壊:3,819戸
死者:18人
負傷者:1,018人(重傷者194人)
断水:18,258戸
停電:5,849戸
津波の発生はなく、建物被害は揺れ、液状化、火災によるもの。
死者18人は建物倒壊によるもの。
断水は1週間後も10,088戸が想定されている。
停電は1日後には427戸に減る。
八重山諸島南方沖3連動地震
東日本大震災のように、プレート境界面で大きなずれが発生する海溝型の地震です。
沖縄県では13パターンの海溝型地震を想定しています。このうち、宮古島~与那国島の南の海域の3つの海溝型地震が連動して発生するのが「八重山諸島南方沖3連動地震」
1771年に宮古島、石垣島で大きな被害が出た明和の大津波はこの震源域で発生しました。
津波による大きな被害が想定されています。
被害想定
八重山諸島南方沖3連動地震の被害想定です。
最大マグニチュード:9.0
宮古島での最大震度:6弱
建物全壊:1,144戸
建物半壊:1,918戸
死者:371人
負傷者:3,685人(重傷者1,196人)
断水:5,040戸
停電:3,632戸
建物全壊の要因は、揺れが284戸、液状化が12戸、火災が3戸、津波が845戸。
死者371人のうち、369人は津波による犠牲者。
津波被害が想定されるエリア
沖縄県が公表している津波浸水想定図です。
宮古島は最も高い場所の標高が115m。とても平坦な島です。
津波の被害が想定されるエリアには、集落が形成され、多くの人が住んでいます。
リゾートホテルも多く、観光客の被害も心配です。
八重山諸島南方沖でマグニチュード9.0の3連動地震が発生した場合の、津波の高さ、到達時間の想定をエリアごとにまとめました。
池間島
最大遡上高;17.3m
到達時間;35分
(最大遡上高は、津波が到達する最も高い場所の海抜)
池間島は人口約400人。
宮古島の中で高齢化率が非常に高い地域で、多くのお年寄りが暮らしている。
港を中心に集落が形成されている。
小学校・中学校の海抜は1メートル。
老人介護施設も海抜1メートルの場所にある
海沿いには宿泊施設も立ち並ぶ。
2016年に宮古島市が津波避難施設を整備 (海抜11メートル)
平良港
最大遡上高;12.5m
到達時間:38分
宮古島の生活物資の99%が入ってくる平良港。
港の近くにはホテルアトールエメラルド、ホテルLOCAS,サザンコースト宮古島など宿泊施設も多い。
平良港と宮古空港の間の直径5キロほどのエリアが宮古島の市街地で3万人以上が暮らしている。
宮古島最大の繁華街(西里通り付近)は平良港から500mしか離れていない(海抜は約20mある)
平良港から避難する場合は、海抜の高い方向に坂を上る。
上野宮国
最大遡上高;26.5m
到達時間:19分
宮古島の南海岸に広がる島内最大のリゾートホテルエリア。
株式会社ユニマットプレシャスが「シギラリゾート」のブランド名で宿泊施設や飲食店、観光温泉施設、ゴルフ場などを展開。
ホテルブリーズベイマリーナ・ウィルネスヴィラブリッサは海の目の前。
海沿いには、リゾートエリアで働く従業員用の寮もある
1771年に発生した明和の大津波で大きな被害が出たエリア。
この場所にあった集落は壊滅的な被害を受け、高台に移転した。
津波の予想到達時間はわずか19分。
宮古島の南の海域での巨大地震が想定されているので、南海岸は大きな被害が想定されている。
城辺友利
最大遡上高;28.3m
到達時間:16分
上野宮国と同じく、宮古島の南海岸に位置する。
観光客に人気のインギャーマリンガーデンがある。
インギャーコーラルヴィレッジ、インギャースイートなど、海沿いに宿泊施設が次々オープンしている。
1771年に発生した明和の大津波で大きな被害が出たエリア。
この場所にあった集落は壊滅的な被害を受け、高台に移転した。
最大遡上高28.3mは宮古島の全調査点の中で最も高く、予想到達時間16分は最も短い。大きな被害が懸念される。。
与那覇湾
最大遡上高;9.8m
到達時間:32分
与那覇湾から与那覇前浜にかけての海抜が低いエリア(与那覇、上地、川満、洲鎌)に集落が形成され約2000人が暮らしている。
与那覇前浜の近くには、宮古島東急ホテル&リゾーツやマリンロッジマレアがある。
2015年、宮古島市が津波避難施設を整備(海抜3メートル・3階建て)
伊良部
最大遡上高;25.9m
到達時間:31分
伊良部島と下地島の間の入江はほぼ浸水。
伊良部島に隣接する下地島は大部分が浸水。
下地島空港はほぼ全域が浸水。
伊良部島の海抜の低い場所には5つの集落(伊良部・仲地・国中・長浜・佐和田)があり、約2,400人が暮らしている。
2015年、宮古島市が津波避難施設を整備(海抜4m・3階建て)
ここ数年、伊良部島と下地島の間の入江や、伊良部島の南海岸でリゾート開発が急速に進んでいる。
特に、伊良部大橋を渡って左折した一周道路沿いは、サトウキビ畑だったところにホテルやカフェ、別荘が次々に建てられている。
ヴィラブリゾート・紺碧など、一階建て・一棟貸しで周辺に高い建物がない宿泊施設もある。
リゾートホテル壊滅のシナリオ
宮古島のリゾートホテルが大きな被害を受けるのは、宮古島の近くの海域で巨大地震が発生し、津波が襲ってきた場合です。
津波が発生する震源域は島の南側なので、南海岸ほど高い津波が想定されています。
私がぱっと思いつくだけでも以下のホテルは宮古島市の津波浸水想定域にあります。
【平良港近く】
・ホテルアトールエメラルド
・ホテルLOCAS
・サザンコースト宮古島
・ホテル共和
【上野宮国】
・ブリーズベイマリーナ
・リゾートヴィラブリッサ
・THE SHIGIRA
・フェリスヴィラスィート
【城辺友利】
・インギャーコーラルヴィレッジ
・インギャースイート
【下地与那覇】
・宮古島東急ホテル&リゾーツ
・マリンロッジマレア
【伊良部島】
・ヴィラブリゾート
・紺碧
・ホテルてぃだの郷
・伊良部島ホテルサウスアイランド
ここに記載した以外にも、浸水想定域内に宿泊施設はたくさんあります。
特に上野宮国、伊良部島では、リゾート開発が次々に進んでいます。
来間島や城辺長間で建設中の大型リゾート施設も、津波の浸水想定域内にあります。
過去の津波災害の教訓
1771年に発生した明和の大津波では宮古で2,548人が死亡しました。
明和の大津波は1771年4月24日に発生。
震源は石垣島近海。マグニチュードは7.4。
宮古島で特に被害が大きかったのは、南海岸エリア
南海岸の城辺友利、城辺砂川、上野宮国、上野新里の4つの集落は地震後、高台に移転しました。
南海岸で津波に流された人たちは与那覇前浜に流れ着き、前浜の裏にある前山に葬られたとされています。
宮古島東急ホテル近くにある前山には、犠牲者を葬る石碑が現在も残っています。
明和の大津波では、伊良部島や池間島でも被害が出た記録が残っています。
四方を海に囲まれた宮古島。
いつ巨大地震・巨大津波が発生してもおかしくありません。
私が宮古島に移住して5年。年に5回ぐらいは揺れを感じる地震があります。津波注意報が発表されたことも5年間で2回ありました。
宮古島に移住するなら「海の近くに住みたい」と考えがちですが、海の近くは津波のリスクと隣り合わせです。
「プチバブル」と言われる宮古島。海沿いのエリアには、次々にリゾートホテルが建設され、土地の価格が高騰しています。
上野宮国、城辺友利、伊良部島の南海岸・・・。
リゾートには最適なエリアかもしれませんが、なぜこれまで開発が行われてこなかったのか。島の人たちは知っています。