宮古島の第2の空の玄関口「みやこ下地島空港ターミナルが2019年3月に開業しました。
ターミナルの開業に合わせ下地島空港では24年ぶりとなる定期便ジェットスターの成田―下地島便が就航。空港が開業した3月30日にはセレモニーが行われ、空港は祝賀ムードに包まれました。
下地島空港の一番の魅力は、宮古島でも有数の絶景スポット「17END」の美しい海を間近に見ながらの着陸。着陸時に飛行機の窓から見える風景は間違いなく日本一の美しさです。
17END側から着陸するためには南風が必要。しかし開港日、下地島空港にはやや強い北風が吹いていました。記念すべき空港の開港と初便の就航。乗客の歓喜を演出したのは、管制官と機長の神対応でした。
初便着陸ドキュメント
下地島空港新ターミナルが開業した3月30日。下地島空港では朝8時頃からセレモニーが行われていました。真新しい空港を一目見ようと乗客だけでなく伊良部島の人たちも見物に訪れていました。
初便の到着時刻は10時40分。初便到着30分前からターミナル近くの滑走路が見える場所に、着陸を見ようと人が集まり始めました。
飛行機の着陸を間近で見れる17ENDは、下地島空港の定期便就航に合わせ車両通行止めになりました。見物人たちは空港外周道路を20分以上歩いて、17ENDでカメラを構え、初便の到着を待っていました。
この日の下地島の天気は晴れ。午前10時には気温が25度まで上がって夏日に。3月とは思えない陽気。見物人はみんな半袖です。
天気がいい日は南風が吹くことが多い下地島ですが、この日の風向きは北。午前10時には北風が7メートルほど吹いていました。
飛行機の着陸には向かい風が適しています。追い風だと減速しにくいためリスクを伴います。
北の風7メートル。飛行機に少し詳しい人なら17ENDからの着陸は絶望的とも言える風向きと風の強きです。見物に来ていた航空マニアっぽい人たちからも「今日は無理だ」と言う会話が聞こえてきました。
記念すべき初便の就航を見届けようと、見物人はどんどん増えて行きます。
滑走路の手前にはカメラを構えた多くの報道陣。どこかから情報が伝わったのかカメラのレンズは17ENDと反対側の空を向いています。やはり初便は17ENDとは反対側から着陸するようです。
成田空港を朝7時半に出発した初便。乗客は着陸の瞬間を待ちわびていたに違いありません。航空マニアの聖地と言われながら定期便が就航していなかった下地島空港。定期便の就航でついに17ENDへの着陸を乗客も楽しめるようになりました。
快晴と言っていいほどの青空。太陽に照らされてキラキラ輝くエメラルドグリーンの海。これで17ENDから着陸してくれれば、言うことはありません。
到着予定時刻を少し過ぎた頃「来た」と声が聞こえました。指差しているのは17END方向。よく目を凝らして見てみると、青空の中にヘッドライトを照らしたジェットスター機体が確認できました。
「え?」「17ENDから着陸する?」
北風7メートルで北側から着陸なんて、普通ではありえません。
ふと頭をよぎったのは「17ENDを見せてから反対側に回り込んで着陸」というパターン。記念すべき初便就航。乗客に17ENDの絶景を空から楽しんでもらおうという、機長の粋な計らい。
「機長やるね」と思いながら、17END方向に目を凝らします。
どんどん大きく見えてくる飛行機。高度を下げ、海面すれすれを飛んで近づいてくる機体。
「あれ?」「ほんとに着陸する?」
飛行機はどう見ても着陸態勢。エメラルドグリーンの海の上を一直線に滑走路へと進入してきます。
そこからはあっという間。心地よいエンジン音と共に、シルバーに輝く機体が着陸しました。
追い風の中の着陸でしたが機体はとても安定していました。
北の風7メートル。常識的に考えれば北側からの着陸はあり得ません。管制官とパイロットがどのようなやりとりをしたかはわかりませんが、管制官、パイロットがどちらも追い風での着陸を了承し、受け入れたことになります。
神対応をもたらしたもの
管制官と機長がどんな人物かはわかりませんが、17ENDからの着陸で乗客を喜ばせようという意図が働いたのは間違いありません。
管制官が堅物な人間なら、北側からの着陸は許さなかったはずです。17ENDからの着陸を許した管制官は、後日上司に怒られたかもしれません。
それでもこの決断は、すばらしいものだと思います。
この日、下地島空港の飛行機の離着陸はジェットスターの成田空港からの一往復便だけ。飛行機は10時50分頃着陸し、11時半に離陸しました
飛行機は17END側から着陸し、17END側に離陸して行きました。北側から着陸すれば、普通は南側へと離陸していきます。この日は北側から着陸し北側に離陸しました。
飛行機を利用する便が多ければ、管制官の神対応は不可能だったはずです。管制官のこの日の仕事は初便の着陸と離陸の指示のみ。このゆとりある状況が管制官の神対応をもたらしたのかもしれません。
リゾート地宮古島に住んで感じるのは、おもてなしの質の大切さ。どんな高級ホテルでも従業員のホスピタリティが低ければ宿泊客の満足感にはつながりません。
「空港からリゾートはじまる」をコンセプトに開港した下地島空港。開港初日の乗客に歓喜をもたらしたのは、管制官と機長の神対応でした。