宮古島と橋でつながる伊良部島。ここ数年リゾート開発が急速に進み、移住先としても注目を集めています。
宮古島に5年暮らしている経験と、伊良部島移住者から聞いた話を参考に、伊良部島移住の現実をまとめてみました。
開発が進む過疎化の島
伊良部島は宮古島と橋でつながる、人口5000人の離島。
以前はフェリーでしか宮古島と行き来できませんでしたが、2015年の伊良部大橋開通以降、昼夜を問わず自由に往来できるようになりました。
伊良部大橋の開通で全国的な注目度が高まり、伊良部島には観光客が急増。島の南海岸線沿いの土地は島外企業に買い占められ、リゾートホテルが次々と建設されています。
2019年には伊良部島の隣、下地島の下地島空港に定期便が就航。宮古では初めてとなるLCC便や国際線が定期就航し、注目度はますます高まっています。
その一方で、島では高齢化と過疎化が進んでいます。
昭和40年に1万人以上いた伊良部島の人口は約5000人に半減。
伊良部島唯一の高校、伊良部高校は生徒数が減り続け、2021年で廃校になります。2018年まで伊良部島には小学校2校、中学校2校がありましたが、2019年に統合され現在は小中一貫校「結の橋学園伊良部島小中学校」のみです。
豪快で人懐っこい性格
伊良部島には伊良部と佐良浜の2つの集落があります。地元では伊良部は南区、佐良浜は北区と言われます
伊良部島の人たちは豪快な性格で有名です。
沖縄本島の人たちは沖縄で一番野蛮なのは宮古島の人だと言います。宮古島の人たちは伊良部島の人は野蛮だと言います。
男性も女性も物おじしない強気の性格で、伊良部島の人は「社長になるか、ヤクザの組長になるか」と冗談交じりに言われることがよくあります。
豪快で仲間意識が強く、情が深い。伊良部島の人は仲良くなると親戚のように接してくれます。
伊良部島に移住するなら、伊良部、佐良浜のどちらかの集落に住むことになります。電気、水道、ガスがないので、集落外には住めません。
島の南海岸のリゾートエリアには移住者の家も一部ありますが、大半はリゾートホテル。このエリアは土地価格が急騰し、開発が進んでいて、今後移住するのは厳しいです。
仕事は宮古島の方がある
伊良部島にも建設業、マリンレジャー業、ホテル業など仕事はありますが、宮古島の方が仕事は多いです。
宮古島・伊良部島では、建築業、マリンレジャー業、ホテル業、看護師、介護士、保育士は慢性的な人手不足。仕事の内容を選ばなければ誰でも就職できます。
ただし、給料はかなり少ないです。
宮古島、伊良部島では初任給15万円は普通。18万円もらえればいい方です。私は宮古島の企業で働いています。30代で基本給は19万円台です。
給料が安いからと言って仕事が楽なわけではありません。宮古島では週休2日の職場はほとんどありません。週休1日の職場が多いです。土曜日も働いている人が多いです。
移住して農業を志したり、漁師を目指したり、カフェ開業に挑戦したりする人もいますが、うまくいくのは一握り。
長く移住生活を続けている人の大半は、お金に余裕のある人か、組織に属して一生懸命働いている人です。
物価が高い
伊良部大橋の開通で伊良部島での暮らしはかなり便利になりました。
伊良部島には「しもじスーパー」という地元のスーパーが2店舗。JAが経営する「Aコープ」が1店舗あります。集落の中心には小さい商店もあります。
橋の開通前は「しもじスーパー」「Aコープ」での買い物が定番でしたが、橋の開通後は宮古島のドンキホーテやマックスバリュなどに買い出しに来る人も多いです。
伊良部島のスーパーに比べれば宮古島のスーパーは安いです。それでも内地に比べれば物価はかなり高いです。
特にガソリン代や乳製品、野菜が高いです。家賃も高いです。家賃相場は地方都市の福岡並み。移住者は「給料は少ないのに家賃が高い」というジレンマに苦しみます。
台風のリスク
伊良部島には毎年、猛烈な勢力の台風が接近します。台風が接近し暴風警報が発表されると、伊良部大橋が通行止めとなります。
伊良部島の住民は橋の閉鎖で島に缶詰めになります。島の人たちは台風が来ても動じませんが慣れていない移住者は動揺します。
台風で困るのは停電。伊良部島は宮古諸島の中でも特に停電しやすいエリアです。台風が来るたびに必ずと言っていいほど停電します。
離島なので、復旧作業も後回しにされ、丸1日停電が続いたりします。停電時にはインターネットも使えなくなります。冷蔵庫が動かないので食べ物の管理が大変です。電気とガスが連動していれば、ガスも使えません。夜は家の中も外も真っ暗です。
伊良部島は宮古島の市街地エリアに比べるとかなり停電しやすく、停電している時間も長いです。台風時のストレスを考えれば宮古島の市街地エリアに住んだ方が無難です。
移住者差別
移住者はマイナスからのスタートです。島の人たちは移住者に対してあまり良い印象をもっていません。中には「内地で犯罪をして逃げてきた?」と警戒する人もいます。
宮古島に住んで5年。島の人たちの移住者への厳しい目線を感じる機会は何度もありました。そのたびに、私たちは島におじゃまさせて頂いている立場で、島の人たちが守ってきた伝統や風習を変えてはいけないのだと痛感します。
島の人たちは観光客には優しいです。島にお金を落としてくれる観光客には「わざわざ遠くまで来てくれてありがとう」というスタンスで接します。生活の妨げになる可能性のある移住者は「よそ者」として捉えます。
移住者差別というと大げさに聞こえますが、島の人たちが移住者になかなか心を開いてくれないのは事実。信頼関係を築くには時間がかかります。
島の人たちの信頼を得る一番の近道は、島のためになる仕事を一生懸命やること。島に貢献していれば、島の人たちは少しずつ心を開いてくれます。
離島では住んでいる人たちの「なわばり意識」が特に強いです。「なわばり意識」は田舎に行けばいくほど強いです。伊良部島はその最たる例。伊良部島の人たちは自分たちの島に誇りを持っています。出身地はどこかと聞かれれば「沖縄」でも「宮古島」でもなく「伊良部」「佐良浜」と答えます。
なわばり意識の強い伊良部では、移住者は宮古島以上に警戒されます。どこで何の仕事をしているかわからないようなタイプの移住者は特に警戒されます。本人のいないところで良くない噂が立つこともあります。
伊良部島に移住する上で一番大切なのは、隣近所や集落の人たちと良好な関係を築くこと。これができなければ、島には住めなくなります。
伊良部島では集落ごとに小さな地域行事もたくさんあります。全く参加しないのも、でしゃばって参加しすぎるのも嫌がられることがあります。うまく空気をよみつつ、島になじみ、島の人たちのように暮らすことが、移住成功への鍵です。
まとめ
伊良部島移住についてまとめました。
宮古島は沖縄本島や石垣島に比べると移住のハードルが高い島です。伊良部島への移住は宮古島以上に困難を伴います。
厳しい道のりですが、伊良部島でたくましく生きている移住者もいます。移住成功者は、移住者には見えません。地元の人に見えます。顔も、話し方も、考え方も、価値観も、伊良部島の人にそっくりです。
頑固でこだわりの強いタイプの人は離島移住には向いていません。理不尽なことも受け入れるタフさと、島の人を心の底からリスぺクトする気持ちがなければ、伊良部島では生きていけません。
伊良部島への移住を考えている皆様の参考になれば幸いです。