日本有数の観光地、沖縄・宮古島。
観光客が急増し「宮古島バブル」ともてはやされる中、島では様々な問題が起きています。
私が移住した5年前とは、島の様子は大きく変わりました。バブルで儲かっている人も一部いますが、多くの島民や移住者は島の急激な変化に戸惑っています。
宮古島の問題点、住民が困っていることをまとめました。
外国人観光客急増
2015年以降、宮古島には外国人観光客が急増しています。
外国人観光客の大半はクルーズ船で港から宮古島に入ってきます。
2014年まで宮古島に寄港するクルーズ船は年間0隻でした。クルーズ船は2015年から増え始め、2018年には年間143隻が寄港しました。
クルーズ船客の多くは中国人・台湾人観光客。船は8~10時間島に滞在します。一度に船から下りてくる外国人観光客は2000人~4000人です。
中国人観光客と言えば、数年前は「爆買い」が話題になりましたが、宮古島に来る中国人観光客はそれほど島にお金を落としません。
中国人観光客を案内するバス会社やタクシー会社、中国人ツアー客を受け入れる飲食店、ドラッグストアなどは儲かっていますが、利益を得ているのは一部の企業です。
中国人観光客はお金は落としませんがゴミは落とします。
中国人のバスツアーが通り過ぎたあと、ビーチにはゴミが散乱しています。
離島の静かな海を求めて宮古島に来る人は要注意です。クルーズ船入港とタイミングが重なると、ビーチでは波の音は聞こえません。聞こえるのは中国語です。
夏のピーク時には週に5日クルーズ船が入ってきます。日本人観光客が良くて中国人観光客がダメだと一概には言える問題ではありませんが、島民は戸惑っています。
タクシーに乗れない
クルーズ船の入港日にはタクシーがクルーズ船客の送迎に集中します。
島には約200台しかタクシーがありません。クルーズ船客は「3時間 1万円」のようなツアー形式でタクシーを利用するので、島の人を乗せるより、クルーズ船客を乗せた方がタクシーは儲かります。
クルーズ船客のツアーがピークの時間帯は宮古空港のタクシー乗り場からタクシーが消えます。島の高齢者が病院に行くためにタクシーを呼んでもつかまりません。
どうしてもタクシーに乗る必要がある人は、前日までにタクシーを予約しています。
観光客急増中の宮古島では、観光バスは増えていますが、タクシーは増えていません。
観光バスは沖縄本島のバス会社の新規参入で50台から100台ぐらいに増えました。タクシーは200台のままです。
タクシーがクルーズ船客に優先的に配車されているのは島民にとっては大きな問題です。
水難事故が多すぎる
観光客にはあまり知られていませんが宮古島は水難事故がとても多い島です。2013年からの5年間で27人が海で死亡しました。
特に台風通過前後の水難事故が多いです。台風が近づくと海は急変します。風が強まる前から波は高くうねります。
島の人たちは、台風前後は絶対に海には近づきません。漁師も台風が近づく数日前から漁には出ません。
浮かれ気分の観光客は台風が通過して風が弱まると海水浴ができると勘違いします。台風通過後も波浪注意報が出ている間は海でのレジャーは危険です。
ダイビング業者の中にはギリギリまでツアーを行うところがあります。インストラクターがいるから安全だと思い込むのではなく、台風通過前後は水難事故のリスクが高いことを理解して自分の命は自分で守る必要があります。
2015年に伊良部大橋が開通し宮古島と伊良部島が橋でつながってから、伊良部島での水難事故が急増しています。
渡口の浜、中之島海岸、17エンド。橋の開通前は人がほとんどいなかった場所で水難事故が多発していて、問題になっています。
ビーチが無法地帯
宮古島のビーチは長年無法地帯の状態が続いていました。
日本有数の観光地なので、本来ならメジャーなビーチは宮古島市役所がライフセイバーを配置して管理すべきですが、前浜ビーチにも新城海岸にもライフセイバーはいません。
市役所は観光客の水難事故は完全に自己責任というスタンスでした。
警察や観光関係者からの指摘を受け、市役所はようやく重い腰を上げました。2020年から前浜ビーチ、新城ビーチ、中之島海岸の管理が始まります。
ライフセイバーを設置することなどを条件に市役所と民間業者が管理委託契約を結びます。
これまで無法地帯だったビーチには違法営業を続けて居座っている業者や反社会的勢力、ヤクザの噂が絶えません。市役所がビーチを適正に管理できるかは疑問です
観光地立ち入り禁止
観光客の急増により、立ち入り禁止になった観光地もあります。
伊良部大橋の開通前、知る人ぞ知る絶景スポットだった下地島空港の滑走路外周道路沿いの海「17エンド」。
橋の開通後、インスタグラムなどのSNSで拡散されて観光客が急増。
サップを持ち込む業者が出てきたり、浮輪で浮いていた観光客が潮に流される事故が発生したことで、17エンドへの観光客の立ち入りが問題視され、2019年3月に車両での通行が禁止されました。
断崖絶壁にある伊良部島の三角点では転落事故の危険性が指摘されています。ひとたび事故が起きれば大問題。事故が発生する前に立ち入り禁止にすべきだという声が広がりつつあります。
工事現場が多すぎる
宮古島バブルと表現される島では開発ラッシュが加速しています。島は工事現場で溢れています。
特に宮古島の南海岸や伊良部島の南海岸はすさまじい勢いで開発が進み、風景が激変しています。
開発ラッシュによって工事車両の通行が急増しています。島では大型トラックやミキサー車、クレーンなどが轟音を立てて走っています。
工事車両は市街地エリアの生活圏や、観光客がよく通る島の一周道路でも目立ちます。
工事車両の多さは、リゾートアイランドとして売り出している宮古島の問題点と言えます。
レンタカーの交通事故
宮古島では観光客が運転するレンタカー絡みの交通事故が急増しています。宮古島警察署によると2018年に宮古島で起きた交通事故の半数はレンタカー絡みでした。
宮古島には運転に慣れていないと優先道路がわからなかったり、車の飛び出しが多い危険な交差点が複数あります。
交通量の増加に対応するため、道路を広くしたり、新たに信号を設置する作業も行われていますが、全く追い付いていません。交通事故は増える一方です。
家賃高騰
宮古島の住民が一番困っているのは家賃高騰問題。
開発ラッシュで島外から多くの労働者が宮古島に入ったことで、島の賃貸物件は満室状態。
この状況に便乗して家賃を値上げする大家が続出しています。
「4万円を8万円にする」「来月から急に3万円値上げ」など悪質な事例も見られます。
宮古島の飲みの席では必ず話題に上がるほど家賃値上げ問題は深刻です。。
家賃値上げは、宮古島最大の不動産会社、住宅情報センターアパマンショップが中心となって仕掛けています。
アパマンショップは大家に積極的に値上げを働き掛けています。
空き物件がないので、住民はアパートを追い出されると住む場所がありません。「値上げが嫌なら出ていけ」と言わんばかりにアパマンは強気です。
不動産屋のホームページには一部空き物件もありますが、相場を大きく上回る家賃の物件ばかり。
特に新築物件の家賃は異常な高さです。1DKで月10万円。3DKで月25万円。広さ6畳のコンテナハウスで月9万など、新築物件の家賃は都心並みです。
家賃高騰で移住者も困っていますが、島の人たちはもっと困っています。「一人暮らしがしたいけど物件がない」「結婚したのに実家暮らし」「島を出た若者が帰って来れない」など、家賃高騰問題の影響は様々なところに出ています。
建築費高騰
建設ラッシュの宮古島では、建設費が高すぎて家が建てれません。
宮古島の家の大半は台風対策で鉄筋コンクリート造り。鉄筋コンクリート一戸建ての建築坪単価は130万~150万円と言われています。
この数年間で建築坪単価は倍になりました。
よほどのお金持ちでなければ、宮古島では家を新築できません。
土地を買ったけど家を建てれない人もいれば、新築をあきらめて中古物件を探す人もいます。
建設費の高騰に引っ張られるように、中古物件の価格も高騰しています。移住者や島の人たちの中には宮古島バブル崩壊を待ち望んでいる人も多いです。
給料が上がらない
家賃や建設費が高くなる分給料が良くなれば問題ないのですが、宮古島バブルで給料が上がったという話は全く聞きません。
元々宮古島は給料が少ない島。沖縄の給料は全国平均の3分の2と言われています。宮古島はそれをさらに下回ります。
30代正社員の私の毎月の基本給は19万円です。
家族を養うにはギリギリの給料です。給料が少ないのに家賃が上がる。泣きっ面にハチです。
観光客の質の低下
数年前まで宮古島は簡単に行ける観光地ではありませんでした。
長年、本土からの直行便は羽田と宮古を結ぶ1日1往復だけでした。
2015年以降、状況が一変。関西や名古屋からも直行便が飛び、新ターミナル開業した下地島空港には成田、関西からジェットスターが飛ぶようになりました。
石垣島よりも観光開発が遅れ「何もないからのんびりできる」のが魅力だった宮古島は激変しています。
気軽に行けるようになったことで、観光客の質も変わってきました。
飲食店経営者は、以前に比べ客がわがままになったと言います。
数年前までは、苦労して時間をかけて宮古島に旅するからこそ、離島に来たという実感が観光客にあったといいます。今では都会の感覚のまま宮古島に入ってくるので、離島のゆる~い接客に観光客がイライラしトラブルになることがあります。
観光客の質の低下は観光地としてのブランドの低下を招きます。
ホテルマンの質の低下
観光客の質の低下も問題ですが、ホテルマンの質の低下はそれ以上に大問題。
リゾートホテルが次々に開業している宮古島ではホテルマンの質の低下が顕著です。
元々、宮古島のホテル業界は離職率がとても高いです。ホテルでの仕事は時間が不規則な上、重労働。従業員の入れ替わりが激しく、慢性的に人手不足です。
宮古島バブルの影響でホテル業界の人手不足はこれまでにないほど深刻。業界未経験の新人が高級リゾートホテルのフロントにいることもあります。
ホテルマンの質は、リゾートホテルの施設の質と同じぐらい重要です。ホテルマンの対応が不誠実で嫌な思いをすれば、宮古島旅行の思い出は台無しになります。
今後も次々と大型ホテルが開業する予定の宮古島。どんなに立派な施設を作っても、優秀なホテルマンを確保できなければ、一流ホテルとは言えません。
まとめ
観光客が急増している宮古島には様々な問題点があります。
石垣島に追い付け追い越せで観光客増加を目指してきた宮古島。2018年の年間観光客数は100万人を突破しました。
住んでいる感覚からすると、100万人でも小さな島はパンク寸前ですが、宮古島市は年間200万人を目指すと宣言しています。
年間200万人を目指す前に、島で起きている様々な問題を解決しなければ宮古島バブルは足元から崩壊します。