日本のオーバーツーリズム事例|観光客急増でパンク寸前の宮古島

沖縄の離島、宮古島に移住して5年のshimagurashiです。

2014年に年間43万人だった宮古島の観光客は2019年に113万人に。

わずか5年で観光客は2.6倍。特に外国人観光客の増加が目立ちます。

人口5万4千人の小さな島は、観光客の急増でパンク寸前。

日本のオーバーツーリズムでは京都や鎌倉などの事例が有名ですが宮古島住民も大きな観光公害を被っています。

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宮古島とは

沖縄本島から南西に300キロ、東シナ海にポツンと浮かぶ宮古島。人口5万4千人。主な産業は農業、漁業、観光業。

東洋一美しいと言われる与那覇前浜を筆頭に日本屈指のビーチを有し、観光地としてのポテンシャルはハワイに匹敵するとも言われています。

沖縄本島に比べアクセスが悪く、旅費が高かったことから、観光客数は伸び悩んできました。年間観光客数は長年30万人~40万人でした。

石垣島に比べると観光客も移住者も少なく、南国ならではのゆったりとした空気感の中で島の人たちは穏やかに暮らしていました。

そんな宮古島に2015年以降観光客が急増。典型的なオーバーツーリズム状態となりました。

観光客急増

宮古島の観光客は2015年以降急増しています。

【宮古島の年間観光客数】
2014年 43万0,550人
2015年 51万3,601人
2016年 70万3,005人
2017年 98万8,343人
2018年 114万3,031人
2019年 113万9,112人

2015年以降年間20万人ペースで観光客が急増しています。特にクルーズ船で海外から入ってくる外国人観光客が増えています。

観光客数が年間100万人に迫った2017年頃から宮古島はオーバーツーリズム状態。観光公害への苦情が聞こえるようになりました。

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オーバーツーリズムの原因

伊良部大橋の開通、県外からの直行便の充実、海外からのクルーズ船急増、下地島空港新ターミナル開業など、宮古島は複合的な要因によってオーバーツーリズム状態となりました。

伊良部大橋開通

宮古島オーバーツーリズムの始まりは伊良部大橋開通。

2015年1月、宮古島と伊良部島を結ぶ全長3540メートルの伊良部大橋が開通しました。

離島住民の生活苦解消を目的にかけられた橋ですが、地元住民が思っていた以上に観光面で大きなインパクトがありました。

伊良部大橋開通をきっかけにテレビや雑誌で宮古島観光の特集が組まれるようになり、全国的な宮古島の知名度が急上昇。

インスタグラムやツイッターなどのSNS拡散効果もあり、宮古島の観光地としてのポテンシャルが広く知られるようになりました。

県外からの直行便

2014年以前、県外から宮古島への直行便は羽田からの1往復だけでした。2015年以降、羽田以外からも直行便が飛ぶようになりました。

2015年 関西―宮古 就航
2016年 羽田―宮古 就航
2017年 名古屋―宮古 就航
2018年 福岡―宮古 就航

関西、名古屋、福岡からの直行便が次々に就航し、羽田からの直行便は1日2往復に増えました。

直行便就航前、関西や名古屋、福岡から宮古島へは乗り継ぎ時間も含め片道3時間半~4時間かかっていました。直行便の就航で所要時間は2時間に短縮されました。

特に関西からの直行便は搭乗率が高く、夏場のピーク時には1日2往復に増便されます。

海外からのクルーズ船

2015年以降、宮古島には海外からのクルーズ船が急増しています。

【クルーズ船の年間寄港数】
2015年 13回
2016年 86回
2017年 130回
2018年 143回
2019年 149回

クルーズ船の大半は中国、台湾から寄港します。2泊3日、3泊4日の日程で宮古島と那覇を周遊するコースが定番です。

一度に寄港するクルーズ船の乗客は2000人~4000人。乗客の大半は中国人・台湾人観光客です。

2018年の寄港回数143回は日本国内のクルーズ船寄港数ランキング5位。博多、那覇、長崎、横浜に次ぐ寄港数で、神戸や佐世保、鹿児島よりも多いです。

人口5万4千人の小さな島に大都市と同程度のクルーズ船が寄港。クルーズ船が来る日は観光バスもタクシーもフル稼働。市民生活でタクシーを使えなくなります。

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下地島空港新ターミナル

2019年3月、宮古島と橋でつながる下地島空港に新しい旅客ターミナルが整備されました。

パイロット養成訓練飛行場だった下地島空港は、国際線や国内線LCCが飛ぶ宮古島第2の空港として生まれ変わりました。

成田、関西からジェットスターの直行便が1日1往復、香港から香港エクスプレスの直行便が1日1往復しています。

下地島空港ターミナルの運営会社は国際線を中心にさらに多くの路線の就航を目指しています。2025年の年間乗降客数の目標は57万人。

下地島空港の国際線路線が増えれば、宮古島の観光客は今後さらに増えます。

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クルーズ船専用岸壁

宮古島の平良港には、以前よりさらに大きなクルーズ船の寄港に対応するための岸壁が整備されました。

これまでは、大型のクルーズ船は港に接岸できず、乗客は小型の船に分乗して宮古島に上陸していましたが専用岸壁の完成で乗客の移動がスムーズになりました。

専用岸壁の整備には世界最大のクルーズ船会社、カーニバル社が関わっています。宮古島へのカーニバル社のクルーズ船寄港はこれまでありませんが、岸壁が完成すれば巨大なクルーズ船を寄港させることは目に見えています。

宮古島のオーバーツーリズムは今後も深刻になる一方です。

地元住民のSOS

オーバーツーリズムの一般的な事例としてよく挙げられるのが、混雑や渋滞、ゴミや騒音の問題。

宮古島でも観光客の急増で夜の繁華街が混雑し、地元住民が居酒屋に入れないことがあります。レンタカーや観光バスの増加で交通量が増え、交通事故も増加傾向です。

心癒される静かな海には中国人観光客のボリュームの大きい声がこだまし、ビーチへのゴミのポイ捨ても目立ちます。

宮古島では日本のオーバーツーリズムの一般的な事例とは異なる、離島ならではの観光公害も見られます。

リゾート開発

宮古島ではすさまじい勢いでリゾート開発が行われています。

海沿いで潮風が強く、畑にすらできなかったような場所を本土企業が買い漁り、リゾートホテルを次々に建設しています。

宮古島には県外からの建設作業員が急増しています。・

建設作業員の増加は、間接的に島民の暮らしを圧迫しています。

アパート不足

建設業者は島外からの建設作業員を住み込みで働かせるため、アパートの部屋を寮として抑えています。

以前からこの動きはありましたが、リゾート開発の加速と共に、建設業者が大量の部屋を抑えるようになり、宮古島はアパート不足に陥りました。

宮古島に移住したい人も、島に帰ってきたい地元出身者も、実家を出て一人暮らししたい人も、住む場所がありません。

私も今住んでいるアパートを追い出されれば、宮古島から出て行くしかなくなります。

建設業者はホテルやペンションにも作業員を住ませています。1泊3000円のペンションに1ヶ月作業員を住ませれば、それだけで9万円です。それでも作業員を雇えるほど、建設業者は儲かっています。

家賃高騰

アパート不足に便乗して、宮古島ではアパートの家賃の値上げが始まりました。

宮古島の本来の家賃相場は単身用の1DKで3万~4万円台。ファミリー向けの3DKで5万円~6万円台です。

宮古島の不動産屋のホームページを見ればわかりますが、新築アパートの家賃は相場を大きく上回っています。

1DKで10万円。コンテナハウスで9万円。などという驚きの物件が出始めています。

最も深刻なのは、今住んでいる家の家賃が値上がりすること。

契約更新のタイミングとは関係なしに、不動産屋から家賃値上げの通知が来て、一方的に家賃が値上げされています。

「来月からいきなり3千円あげると言われた」「家賃4万円が8万円になると言われた」など、住民からは悲鳴が聞こえます。

良心的な不動産屋の物件は家賃が変わりませんが、不動産屋によっては大家に値上げを働き掛けているところがあります。

宮古島最大の不動産屋、アパマンショップ住宅情報センターが特に家賃値上げに積極的だと噂になっています。

日本全国探しても、オーバーツーリズムで家賃が上がったという話は聞きません。

家賃の値上げは家計を直撃します。家賃値上げが原因で島に暮らせなくなり、島から出た人もいます。

宮古島のオーバーツーリズムは、かなり深刻です。京都や鎌倉などの事例では観光地周辺の住民が被害を受けていますが、宮古島では島民全員がオーバーツーリズムの弊害を受けています。

家賃が上がる分給料が上がれば納得できますが、観光客が増えても、開発が進んでも島民の給料は全く変わりません。

観光客急増で儲かっている地元企業はごく一部。利益の多くは島外資本の企業に流れています。

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まとめ

「日本のオーバーツーリズム事例、宮古島の観光公害SOS」をまとめました。

宮古島では2015年以降観光客が急増しています。人口の20倍以上の観光客が毎年島を訪れます。

今後も海外からの国際線やクルーズ船は増える見込みで、オーバーツーリズムは深刻化する一方です。

行政がオーバーツーリズムの対策をする気は全くないようで、宮古島市は年間観光客の目標を200万人に上方修正しました。

増える観光客。加速する開発。取り残される島民。このままでは宮古島は足元から崩れます。

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