ツールド宮古島で死亡事故 危険なコースで起きた悲劇

第12回ツールド宮古島2019で競技中に男性が死亡する事故が発生しました。

対向車の多さ、直角に曲がるカーブ、アスファルト舗装されていない道など、これまでも危険性が指摘されてきたツールド宮古島のコース。

死亡事故発生時の状況とコースの問題点をまとめました。

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ツールド宮古島とは

ツールド宮古島は、沖縄の離島、宮古島の自転車ロードレース。毎年約500人が出場。136キロと74キロの2部門が行われます。

136キロの部は午前7時に競技開始。トップ選手は約3時間30分で島を2周します。トップの平均時速は約40キロです。

74キロの部は午前7時10分に競技開始。トップ選手は約1時間50分で島を1周します。トップの平均時速は約40キロです。

「スポーツアイランド宮古島」と銘打ち、様々なスポーツ大会を開催している宮古島。特に有名なのは毎年4月の全日本トライアスロン宮古島大会。

1500人の選手が出場する人気の大会で、ロングディスタンスのトライアスロン大会では日本一と言われる大会です。

1980年代から毎年トライアスロン大会を開催してきた宮古島。もともと自転車競技にはなじみのある島です。その実績から2008年にツールド宮古島が始まりました。

主催者は「パワースポーツ」。実質的に大会を運営しているのは宮古島市役所を中心とする実行委員会です。エイドステーションでは島のボランティアが給水ボトルを渡して選手をサポートしています。

危険なコース


ツールド宮古島のコースは危険だと以前から自転車競技者に指摘されていました。

ツールド宮古島のコースはトライアスロンの自転車競技のコースとほぼ同じ。

3競技のトライアスロンに比べ、ツールド宮古島は自転車のスピードがかなり速いです。ドラフティングと呼ばれる集団走行も許可されているので、自転車同士の距離が近く、接触のリスクは高くなります。

スピードが速く、自転車同士の距離が近いので、ひとたび事故が起これば重傷事故につながるリスクが高いです。

ツールド宮古島には、直角に曲がるカーブが何ヶ所かあります。ゴール直前には道路がアスファルト舗装されていない場所もあります。

選手が最も危険を感じるのは道路幅の狭さと対向車。

コースの大半は島の外周道路。進行方向と対向車線が1車線ずつの狭い道です。レース時には進行方向は車両立ち入り禁止になりますが、反対車線は普通に車が走行しています。

観光客も島民もツールド宮古島にはほとんど関心がないので、対向車線を走る車は競技の開催を知らない場合もあります。

島の外周道路を走る車の大半は観光客のレンタカー。見通しが良い道でそれほど交通量は多くありません。

危険なのは市街地エリア。スタート、ゴールの「トゥリバー」が市街地エリアにあるので、選手はスタート直後とゴール直前に市街地エリアを通ります。


市街地エリアは交通量が多いです。特に危険なのはゴール直前の約3キロ。マックスバリュ宮古南店を過ぎると交通量が一気に増えます。

最後の3キロは下り坂でスピードが出やすく、交通量が多いのでとにかく危険。上位入賞する力のある選手でも、接触や落車には細心の注意が必要です。


ゴール前の最後の直線、ゴールの100メートルほど手前に、アスファルト舗装されていない道があります。写真ではジャリ道のように見えますが全く舗装されていないわけではありません。


路面は石で、よく見ると模様があります。ゴール地点のトゥリバーは海浜公園として観光客に親しまれています。この場所は公園の入り口。観光客を迎えるための工夫のように見えますが、自転車レースには不向き。車で走行してもガタガタと音がします。

ロードバイクアスファルト舗装された道を走ることを前提に作られています。ゴール直前でスピードが出るこの場所は危険です。

死亡事故発生時の状況

死亡事故は74キロの部で発生しました。

発生場所はゴール直前の直線。亡くなった男性は5位を争う集団にいました。

自転車3台が絡む接触事故があり、競技者3人が転倒。このうち1人が心肺停止状態となりました。

ゴール付近だったため運営側がAEDで心肺蘇生措置を行うも回復せず。男性は救急車で病院に搬送されましたが死亡しました。


自転車が接触したのはゴール前の直線。アスファルト舗装のない部分です。路面の状態と事故の因果関係はわかりませんが、以前から危険が指摘されていた場所で不幸な事故が起きてしまいました。

亡くなったのは沖縄本島から出場していた島袋直樹さん、59歳。自転車競技のコーチもしていた方のようです。

もう一つの事故

5位集団にいた島袋さんより前を走行していた男性選手がゴール手前で対向車線の乗用車と衝突する事故がありました。


事故があったのはゴールまで約700メートルの最後のカーブ。急激な坂を下った後、ほぼ直角に左にカーブする、ツールド宮古島の中でも最も危険なコースです。

選手はカーブを曲がり切れず、対向車線のワンボックスカーと衝突。自転車から投げ出されました。重傷事故にはなりませんでしたが、救護措置のため車から出てきた運転手や周りにいた人たちと後続の自転車が接触し、数人がけがをしました。

主催者の対応

死亡事故発生を受け、大会主催者は閉会式、ふれあいパーティーを中止としました。

大会当日、大会ホームページが更新され「ご報告」という形で文書が掲載されました。

以下、掲載文です。

本日5月26日(日)に開催しました「第12回ツール・ド宮古島2019」にてレース中にフィニッシュ手前で男性が転倒し、心肺停止状態で病院に運ばれましたが、その後死亡が確認されました。

宮古島署によりますと、死因が事故によるものかどうかを含め経緯を調査中です。

亡くなられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

また参加者の皆様には表彰式並びにパーティーの中止を決定しましたことをお詫び申し上げます。

来年以降の対応

ツールド宮古島は2008年に始まった自転車競技のイベント。当時、宮古島の年間観光客数は40万人台でしたが、2018年には100万人を突破しました。宮古島の交通量は以前に比べるとかなり増えています。

島民はツールド宮古島にはほとんど関心がありません。大会の開催を待ち望んでいる島民はごく一部の自転車愛好家。選手の大半は島外から来島します。

ツールド宮古島開催には、宮古島を島外にPRし、観光誘客につなげようという狙いもありましたが、観光客が急増した今ではその目的は十分に達成されました。

スポーツ大会を開催しなくても、宮古島への飛行機は連日満席、ホテルも満室です。

2019年の大会は「死亡事故」という最悪の形で宮古島が全国から注目される大会になってしまいました。

来年以降大会を開催するか中止にするのか、開催するならコースは今のままでいいのか。本格的に見直すべき時期に来ていると感じます。

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