宮古島は移住希望者に大人気。宮古島に中古住宅を購入して移住したいと考えている方も多いかと思います。
5年前に宮古島に移住した私たち夫婦。移住当初はアパートに住み、生活をしながら土地柄や地域性を学んで、中古住宅を購入する計画でした。
移住2年目から中古物件を探し続けていますが、いまだにアパート暮らしを続けています。バブルの宮古島で、中古住宅探しは厳しくなる一方。
宮古島の中古住宅事情を、体験を交えて紹介します。宮古島への移住を考えている皆様の参考になれば幸いです。
一戸建てへの憧れ
5年前に宮古島に移住した私たち夫婦。せっかく移住するならいずれは一戸建てに住みたいという思いはあったものの、いきなり中古物件を購入する勇気はなく、アパートの部屋を借りました。
一戸建ての賃貸物件があればベストでしたが、紹介された賃貸物件は全てアパートでした。
縁もゆかりもない宮古島に移住した私たち。住む場所をきめるにあたって頼りになるのは不動産屋だけ。
物件数が多そうな「住宅情報センター(アパマンショップ)」と「ひろし不動産」で数件の物件を紹介してもらい、住宅情報センターで契約しました。
宮古島がバブルと言われる今では賃貸空き物件はほとんどありませんが、当時は普通に空き部屋がありました。
宮古島の家賃相場は単身用の1DKで3万円~4万円台。家族用の3DKで5万円~6万円台。その後のバブルで宮古島では家賃相場自体が高くなり、1DKで10万円、コンテナハウスで6万円などの物件も出ていますが、当時紹介されたのは相場通りの物件ばかり。
我が家は3DKで家賃6万円です。
中古物件探し
契約した賃貸アパートに特に不満はありませんでしたが、一戸建てに住みたいという思いは消えることがなく、空き時間に不動産屋のホームページを見て情報収集していました。
経営者が地元の人で、地元の人をメインターゲットにしている不動産屋のホームページを主に調べていました。住宅情報センター(アパマンショップ)、ひろし不動産、たっけんカンパニー、比嘉不動産、コクアシティなどです。
ホームページの作りからして移住者をターゲットにしている不動産屋もありますが、移住者向けの物件は相場よりも高いことが多いです。
5年間で2回、中古の一戸建て物件を内覧しましたが、契約には至りませんでした。内覧したいと思える魅力的な物件は、すぐに買い手が見つかりホームページから消えていきました。値段が高かったり、場所が悪かったりする物件は、いつまでのホームページ上に掲載されています。
最初に内覧した物件は、市街地から車で20分の田舎の集落にある平屋の一戸建て。築15年ほどと比較的新しく、3DKで980万円と価格も魅力的でした。不動産屋の「この物件は人気」との言葉通り、1週間もたたないうちに別の方が契約しました。
次に内覧した物件は、市街地エリアの2階建ての一軒家。築25年、1階に広めのリビングと1部屋、2階に2部屋があり、価格は2200万円。魅力的な物件でしたが家の前にガラス工場があるのが難点で、迷っているうちに別の方が契約しました。
バブル到来
2017年頃からプチバブルと言われるようになった宮古島。観光客が急増し、リゾートホテルやアパートなどの建設工事が加速。
建設業で多くの労働者が島外から入った結果、賃貸空き物件がない異常事態となりました。この状況に便乗して多くの大家が家賃を値上げ。我が家も家賃が2000円値上げされました。
バブルという言葉が定着した2018年には、賃貸アパートの家賃相場が高騰。新築一戸建ての建設費や中古物件の取引価格も跳ね上がりました。
新築一戸建ての坪単価はかつて30万~40万円でしたが、2018年には100万円を突破。110万円とも130万円とも言われています。
バブルの宮古島では建設費が高すぎて家を新築する人はほとんどいません。その結果中古物件の需要が高まり、中古物件も高値で取引されるようになりました。
最後の希望
私たちもバブルの波にのまれ、中古物件探しは諦めかけていました
不動産屋のホームページからは賃貸物件も売買一戸建て物件も消えました。残っているのは極端に高い物件ばかり。
毎日不動産屋に通えば、掘り出し物の中古物件に出会える可能性もありますが、共働きで子育て中の我が家にはそんな余裕もありません。
唯一の希望は知り合いから入ってくる情報。宮古島のような小さな島社会では不動産屋から情報が公表される前に、あそこが売りに出るらしいという情報が耳に入ることがあります。
移住者の耳には入りにくい情報ですが、バブルで取引価格が高騰する中、唯一の希望は知り合いからの情報です。
ただし、宮古島では移住者がガツガツするのはNG。「私、家探してます」なんて言いふらして回るようなタイプの移住者は嫌われます。移住者はよそ者、部外者、招かれざる客。息をひそめて、謙虚に、控えめに生きているぐらいがちょうどいいです。
宮古島の人たちのように「なんくるないさ」「なるようになるさ」と気長に待ちました。
すると、ある時「あの家が売りに出るらしい」と情報が耳に入りました。
早速家をチェック。外観を見た感じ、なかなか良さそう。ツテを頼りに所有者と面会させてもらいました。所有者にお願いして、不動産屋から情報が出る前に、不動産屋を通さずに内覧もさせてもらいました。
築30年以上の古い平屋の一軒家でしたが、立地条件は完ぺき。外壁や風呂、トイレはリフォーム済み。間取りにもゆとりがあり、かなり気に入りました。夫婦で話し合った結果1500万~2000万円ぐらいなら前向きに検討しようとの結論に。
バブルの宮古島。不動産屋のホームページに好条件の中古物件が掲載されればすぐに売れます。所有者に仲介予定の不動産屋を聞き、所有者の許可を得て不動産屋に電話しました。
「購入を前向きに検討しています。築年数、販売価格はどれぐらいですか?」
帰ってきた答えは・・・
「築40年以上。予定価格は3500万円」
言葉を失いました。いくらなんでも高すぎます。鉄筋コンクリート造りでも、築40年もすれば建物の価値は0円に等しいはず。リフォームしている分、上乗せがあったとしても、どう計算しても高すぎます。
「建物と、土地をどう評価しての3500万円ですか?」
と聞くと、不動産屋は言葉を濁し
「まぁその、いろいろ報道されてますけど、宮古島はバブルということもあって・・・」
なんとも歯切れの悪い答え。明確な回答はありませんでした。
建物に500万円の価値をつけたとしても土地代だけで3000万円の評価。1坪20万円以上の計算です。宮古島の市街地エリア住宅地の坪単価の相場は8万円~10万円。バブルで多少上がっているとはいえ、坪単価20万円は高すぎます。
さすがに手が出ません。ゲームオーバーです。開いた口がふさがりませんでした。
最後の希望も打ち砕かれた私たちは、移住時に契約した賃貸アパートに住み続けています。契約できなかった3500万円の物件は買い手が見つかったようで、駐車場のリフォーム工事が始まりました。
賃貸空き物件がなく、中古住宅の価格も高騰。この状況が続く限り、我が家は今のアパートを出て行けません。今のアパートを追い出されれば宮古島に住めなくなります。
中古住宅に住む移住者
宮古島移住者の中には運よく好条件の中古住宅を購入した人や、中古住宅を賃貸して住んでいる人がいます。
中古住宅を賃貸している人の中には、不動産屋を通さずに家主から直接家を借りている人もいます。
宮古島の地域に入り込み、地元の人たちの信頼を得れば、不動産屋を通さずに家を借りるチャンスもあります。
「古い家だから」「住んでいる人がいる方がいいから」との理由で家賃1万円で移住者に家を貸している人もいます。
ただし、このケースには大きな落とし穴があります。
家を売らずに貸すということは、いつか帰ってくる可能性があるということ。実際このパターンで家を借りている移住者が「息子が帰ってくるから来月から出て行って」と言う話もよく聞きます。
古い家はメンテナンスが必要です。台風の時は身の危険を感じます。クーラーがなければ自分で何とかしなければなりません。ヤモリやゴキブリは当たり前、ネズミが住みついている家もあります。
家に神様がいるかどうかも重要なポイント。神様がいる(仏壇がある)から家を売らずに貸すという人もいます。家に家主の仏壇があっても気にならないという人は問題ありませんが、少しでも気になるならやめておいた方がいいです。
焦らず待つ
バブルの宮古島では、魅力的な中古住宅にはよほど強運でなければ出会えません。宮古島で生活している私たちでさえ厳しいので、内地で移住計画を立てている方にはかなり厳しいです。
アパート暮らしを続けている私たちですが、今では、移住時に焦って中古住宅を購入しなくてよかったと思っています。
移住当初は「海が近い」「スーパーが近い」「コンビニが近い」などを理由に物件を選びがちですが、生活をしてみると様々なことが見えてきます。
宮古島では「北学区」「南学区」「東学区」「久松学区」というように、小学校の学区で住んでいる場所を表現することがよくあります。
移住生活が長くなると、北学区は古い集落。東学区はサトウキビ畑を切り開いてできた新しい集落。久松学区は移住者が多い。など、学区ごとの特徴が見えてきます。
移住当初は「海が見える」「ビーチまで5分」が魅力的に聞こえますが、移住5年の今では「職場が近いこと」「保育園が近いこと」「周囲に住んでいる人たちの雰囲気」の方がよほど大切です。
移住時には多かれ少なかれ気持ちが浮ついています。この先長く宮古島に住むつもりなら、住む場所は慎重に考えることをオススメします。
最後の希望を失った私たちですが、宮古島での一軒家ライフを諦めたわけではありません。ただし、ガツガツはしません。
宮古島の人たちのように「なんくるないさ」「なるようになる」の気持ちで、気長に待ちます。バブルは長くてもあと5年で終わります。
あれもほしい、これもほしい、という欲深い人は宮古島での暮らしにはなじめません。「絶対一軒家に住みたい」「海が見える家じゃないと嫌」など、こだわりが強すぎる人は移住生活の中で必ず壁にぶつかります。
焦らず気長に待てば、いつかいい出会いがあるかもしれません。出会いがなければ、ここに住み続けなさいというメッセージだと受け取ります。