「海の近くに住みたい」「海辺の町に移住したい」
海が好きな人や、マリンスポーツ愛好家なら誰でも一度は考えたことがあるはず。
私もその1人。海好きが高じて5年前に沖縄の離島、宮古島に移住しました。
南の島での暮らしは楽しいこともありますが、現実は思っていたほど甘くはありませんでした。
海の近くに住みたくて移住した私が5年後どうなったのか、まとめました。
宮古島
沖縄本島から西に300キロ。大海原にポツンと浮かぶ宮古島。四方を海に囲まれています。
東洋一美しいと言われる与那覇前浜ビーチ、シュノーケリングスポットの新城海岸、夕日スポット砂山ビーチなど、日本有数のビーチがあります。
海辺でぼーっとしたり、海水浴をしたり、シュノーケリング、ダイビング、サーフィンをしたり。宮古島の美しい海を目的に毎年多くの観光客が旅行します。
5年前、私は宮古島に移住しました。
子供の頃から海への憧れが強く「将来は海の近くに住みたい」と思っていました。神奈川や千葉など、都会の海辺の町に住むという選択肢もありましたが「一度きりの人生を楽しもう」と思いきって宮古島への移住を決断しました。
移住前の私は、仕事が忙しく会社と家の往復で毎日が過ぎて行くことに大きなストレスを感じていました。「海の近くに住みたい」という思いは、現実逃避の産物でもありました。
どこまでも続く雄大な海。海には、都会暮らしで疲れきった心を癒してくれる不思議な力がありました。
移住生活
宮古島での移住生活はとても快適でした。
移住1年目。宮古島での出来事は全てが新鮮。宮古島に移住したという事実だけで私の心は満たされていました。
本当は一軒家に住みたかったのですが、土地勘がなくいきなり一軒家は不安だったので、アパート暮らしからはじめました。
アパートから海までは500メートル。ベランダからは遠くに海が見えます。宮古島市民の憩いの海、パイナガマビーチまでは車で5分です。
移住前のストレスを発散するかのように、私は宮古島の海を満喫しました。
毎週末のようにシュノーケリングセットを持って海に行き、1時間ほど潜り、ビーチでビールを飲み、夕日を眺める生活。海の近くで生きているだけで、心が浄化されました。
宮古島にはガイドブックに載っていない穴場のビーチも多く、観光客がいない無人ビーチを探すのも楽しみでした。
移住者仲間も増えました。波の音をBGMにバーベキューをしたり、海辺のカフェでランチを食べたり。宮古島に遊びに来る知人は「うらやましい」「夢みたいな暮らしだね」と言ってくれました。
海の近くでの暮らしは順風満帆。私はこのまま大好きな海と共に、充実した人生を歩むはずでした。
甘くない現実
今振り返れば移住1年目が楽しいのは当然。1年目はきついことも楽しめる心の余裕があります。2年目からが移住成功と失敗の分かれ道です。
移住2年目になると、海の近くでの暮らしのデメリットが見えてきました。
一番きついのは台風。宮古島には毎年、猛烈な勢力の台風がいくつも接近します。海に近い家ほど台風の時は風が強いです。ゴゴゴゴゴという爆音とともに、海風が窓を揺らします。
外は最大瞬間風速50メートルの暴風。建物の中にいても身の危険を感じます。
強い台風が接近すると必ず家が停電します。暴風で外での復旧作業は出来ないので、停電は長時間に及びます。
長い時には丸一日停電します。
停電時は電気がつかないのはもちろん、インターネットもつながりません。電気とガスが連動していればガスも使えません。水が出なくなったこともありました。
夜は家の外も中も真っ暗。冷蔵庫も稼働しないので中のものが腐っていきます。
太い街路樹が折れたり、電柱が根こそぎ倒れたり、駐車場の車が横転したり。海の近くでは、都会では想像できないような被害が出ます。
持ち家だと台風後の片づけが大変。庭はめちゃくちゃになります。
島の人たちは台風に慣れていて淡々と後片付けをしますが、台風に慣れていない移住者は心が折れそうになります。特に単身移住者は心細いです。家族での移住なら少しは安心できます。
都会の子供は「台風が来たら学校が休みになるからラッキー」と考えますが、島の子供は台風が来ても喜びません。それほどまでに南の島の台風は恐ろしいです。
強風、湿度、塩害
海の近くの暮らしが不快な三大要素は、強風、湿度、塩害です。
風が強い
夏の台風も困りますが、冬の強風にも心が折れそうになります。宮古島は冬でも気温が10度以上はありますが、風が強く、体感温度は意外と寒いです。
特に海の近くは風が強く、冬の海には地元の人は近づきません。南の島だからといって一年中海に入れるわけではありません。水着で海に入れるのは4月~10月ぐらいまで。1年の残り半分は水が冷たくて海に入れません。
マリンレジャー好きの人たちは厚めのウェットスーツを着て冬にもサーフィンやダイビングを楽しんでいますが。私は寒さに震えてまでマリンレジャーをしたいとは思いません。
湿度が異常に高い
海の近くは湿度が高いです。湿度99%の日もあります。湿度が高く暑い日は東南アジアのような気候。蒸し風呂の中にいるような暑さでとても不快です。
少し外を出歩いただけで汗だくになります。湿度が高いので洗濯物が乾きにくいです。
観光客が数日いる分には耐えられますが、湿度の高い日が何カ月も続くと、体がきつくなります。夏は昼も夜もクーラーにあたり続ける生活。体調が崩れたり、自律神経が乱れまたりします。
悲惨な塩害
海の近くに引っ越すまで全く知りませんでしたが、海辺の町には「塩害」があります。車や自転車があっというまにサビます。
海の近くに車を止めておくと海の潮ですぐにサビます。私の家は海から500メートルですが、それでも駐車場に車を止めているだけで塩害の被害を受けます。移住3年目ぐらいから車のボディの金属がサビ始めました。
車体の下についている排気ガスを送るパイプが塩害で落下したこともあります。海の近くで暮らすと、都会では考えられないような車のトラブルが起こります。
自転車は塩害で2台ダメになりました。塩害の知識がなかったので油断してベランダに5万円の自転車を放置していました。タイヤ周りからサビはじめ、気がついた時には自転車全体がサビていました。サビた自転車はこぐとギコギコ音がしてなかなか進みません。サドルもサビます。サドルが走行中に折れると危ないので買い換えることになります。今私が乗っている自転車は3台目です。
宮古島にはトライアスロン大会があり自転車競技の愛好家が多いです。自転車競技をする人は30万円ぐらいのバイクを持っています。外に置いておくとすぐにサビるので、普段は室内に置いています。自転車に乗ったあとは車体をふいて潮を取り除きます。
仕事とお金
海の近くでの暮らしには想定外のデメリットもありますが、住む環境としては悪くないと感じます。
移住1年目に比べれば海に行く回数は減りましたが、休日にのんびり海を見に行ったり、海に沈む夕日を眺めたりできるのは、海の近くに住む大きなメリットです。
移住5年の今、私を苦しめているのは仕事とお金の現実。
沖縄の給料はとにかく安い。特に離島は驚くほど安いです。30代会社員の私の基本給は19万円。都会では低所得の部類に入りますが宮古島ではこれが普通です。
給料が安いからと言って仕事が楽なわけではありません。夏の暑さの中での屋外の仕事はかなりハード。週休2日がしっかり確保されているわけでもありません。お酒の付き合いも多いです。
宮古島移住者の中にはマリンレジャーの店を開店したり、漁業・農業を始めたり、カフェを開店したりする人もいますが、うまくいくのは一握り。
「海の近くに住むなら会社員で働くのはもったいない」と思われがちですが、宮古島で移住生活が長続きしている人は圧倒的に会社員が多いです。
介護士や看護師など、ハードな仕事で生計を立てている移住者もたくさんいます。
マリンレジャー店は飽和状態。新規参入はかなり厳しいです。
漁業・農業は簡単ではありません。離島の自然環境は特殊なので、島の農家や漁師から学ぶことになりますが、島の人たちは簡単には教えてくれません。カ
フェ経営もいばらの道。移住をきっかけにカフェを開業したものの、経営に行き詰って数年で帰っていく人が後を絶ちません。
都会の殺伐とした職場に比べれば、宮古島の職場はのんびりしていますが、仕事量は少なくありません。移住者は仕事ができると勘違いされがち。移住者に仕事を押し付けて、自分は定時に帰る島の人もいます。
伝えたいこと
海の近くに住みたいと考え、南の島に移住して5年。私が伝えたいのは「どこに住むかではなく、何をするかが大切」ということ。
宮古島の環境はすばらしいですが、海が近いというだけで全てがうまくいくほど人生は甘くありません。
海の近くに住めば、一時的に心が満たされます。ただし、手放しで移住生活を楽しめるのは移住1年目まで。移住2年目になれば、非現実だった海の近くでの暮らしが現実になります。移住前の私は宮古島に行けば現実逃避ができましたが、今では島の外に出ることが現実逃避です。
まとめ
海の近くに住みたくて移住した私は、5年後の今、宮古島でお金を稼ぐために一生懸命働いています。移住前のように会社と家の往復で毎日が過ぎて行く時期もあります。
移住5年の今でも宮古島の海は見飽きることがないほど美しいです。海を眺めることで心が軽くなることもあります。でも、移住当初のような心のときめきはありません。
仕事がきつく、うつ病寸前まで追い込まれたこともありました。まさか宮古島に移住してうつ病になるなんて移住前には想像もしていませんでした。移住生活は思っていた以上に困難でした。
時間とお金に余裕がある人には海の近くでの暮らしはオススメできますが、余裕がない人はどこかで行き詰ります。それを乗り越えるのも人生の大きな糧になりますが、それなりの覚悟が必要です。
このブログでは移住を考えている皆様に様々な角度から情報を発信しています。皆様の参考になれば幸いです。