宮古島、伊良部島有数の絶景スポット、下地島空港17エンドが車両通行止めとなりました。
干潮の時間帯にだけ現れる幻のビーチが観光客の人気を集めていた17エンド。
伊良部大橋の開通で交通量が急激に増え、事故の危険性が指摘されていました。
17エンドはなぜ通行止めになったのか。車で立ち入りが禁止になった理由、通行止めとなるエリアをまとめました。
17エンドは無法地帯
下地島空港17END側(北側)の外周道路沿いに、絶景の海が広がる17エンド。
干潮の時にだけ現れる幻のビーチは、宮古島、伊良部島でもトップクラスの美しさです。
2015年の伊良部大橋開通前、17エンドに観光客はほとんどいませんでした。
JALやANAがパイロット養成訓練のために使用していた下地島空港。空港の北側から着陸する飛行機は大迫力。着陸した勢いのまま離陸するタッチアンドゴーも人気で、航空ファンの聖地と呼ばれていました。
当時17エンドに行くには、宮古島からフェリーで伊良部島にわたり、車で30分ほどドライブしなければなりませんでした。
飛行機が着陸するエリアには航空ファンがいましたが、その西側に広がる幻のビーチに、観光客はいませんでした。
当時から、17エンドに向かう空港外周道路は解放されていました。飛行機の離着陸時には道路の一部を「立ち入り禁止・通行止め」すると、立て看板で警告されていましたが、警備員などはおらず、無法地帯でした。
観光客の急増
2015年の伊良部大橋開通で、伊良部島、下地島の観光客数は急増。17エンドにも観光客が増えました。
インスタ映えスポットとして、SNSで「17エンド」「17END」という言葉が拡散。穴場スポットだった17エンドはあっという間に観光地化し、宮古島初心者の観光客も訪れるようになりました。
17エンドに向かう空港外周道路は、車1台がギリギリすれ違えるほどの道路幅。
潮が引いて幻のビーチが表れる時間帯には、狭い道路にレンタカーが縦列駐車。
最初のうちは、道路からビーチに下りることを躊躇する観光客が多かったですが、ビーチに下りて撮った写真が拡散され始めると「みんなで下りれば大丈夫」とばかりにテトラポット伝いにビーチに下りる人が急増しました。
17エンドのビーチは埋め立てによって人工的に出来たものです。
長さ3000メートルの滑走路を確保するために埋め立てて作られた下地島空港。埋立てによって潮の流れがせき止められ、17エンドに砂が集まり、ビーチのようになりました。
潮の流れがせき止められたことで偶然できたビーチなので、海水浴場でもなければ、監視員がいるわけではありません。ビーチの管理者が決まっているわけでもありません。
水難事故が起これば、海上保安部や宮古島市の消防がかけつけますが、事故は完全に自己責任です。
観光バスも乗り入れる
2016年頃から、大型観光バスも17エンド周辺に乗り入れるようになりました。
下地島空港外周道路は、車1台がギリギリすれ違える道路幅。観光バスが乗り入れたことで、カーブの部分ではすれ違いができなくなり、どちらかの車が直線部分まで下がるという状況が頻繁に発生するようになりました。
観光バスは17エンド近くの車幅が少しだけ広くなった場所に停車し、観光客を降ろしていました。
観光バス業者も一応配慮はしているようで、観光バス同士のすれ違いを避けるため、17エンド周辺の道路は一方通行で運行していました。17エンド付近に長時間滞在することはなく、観光客にはビーチには下りないよう伝えているようでした。
大型観光バスの乗り入れで、17エンドはパンク寸前。いつ交通事故が起きてもおかしくない状況になりました。
マリンレジャー業者の参入
2017年頃、17エンドにマリンレジャー業者が進出。特にサップ(サーフボードのような板の上に立ってオールを漕ぎ、海上散歩を楽しむ)の業者が目立ちました。ワゴン車にサップを積んで17エンドに乗り付け、利用客をビーチへと案内し、サップを体験させていました。
マーメイドフォト業者なども参入し始め、夏のピーク時にはビーチに人が溢れていました。
管理者がいないので、注意する人はいません。
業者が使っているなら安全だろうと、一般の観光客も次々に海に下りていきます。
水着姿の観光客やシュノーケリングを持参する観光客も増えました。
水難事故発生
17エンドのビーチは海水浴場ではありません。どこまでも遠浅の海が続くように見えて、次第に海は深くなります。沖に出ると潮の流れが非常に強く、一度潮の流れに巻き込まれると、自力で戻ってくることはできません。
2017年頃から、17エンドであわや大惨事となる水難事故が発生するようになりました。地元でニュースになったのは、浮輪で浮いていた観光客が潮に流されて戻れなくなり、マリンレジャー業者の船に救助された事故。
潮に流されたこと気づいた人がいて、迅速に対応したため、観光客は救助されましたが、監視員がいない海では大惨事になりかねません。
今のところ死亡事故は発生していませんが、17エンドではニュースにならないような小さなトラブルが頻発しています。
通行止め決定
2019年3月の下地島空港新ターミナル開港を前に、17エンドは車両通行止めとなりました。
通行止めを決めたのは下地島空港管理事務所。2019年2月に、市役所や観光協会、バス会社、タクシー協会、レンタカー業者に通行止めを通知しました。
下地島空港管理事務所が関係機関に通行止めを通知した文書のです。
「下地島空港の通称17側管理用道路は一般の共に要する道路では無いもののこれまで解放し、地域や観光客等に利用されてきております。」
「しかしながら伊良部大橋が開通した平成27年1月以降、当該道路へレンタカーや大型観光バスが頻繁に訪れるようになり、それに伴い交通混雑や交通事故による空港場周フェンスの破損の発生、大型車両通行が原因と考えられる不陸(コンクリートの継ぎ目の段差)の発生等、空港の管理上や保安上等での問題が発生しております。」
「つきましては、今後の下地島空港での旅客便の本格運行を控え、これまで以上に空港管理保安体制に万全を期す必要があり(中略)当該道路を全面車両通行止めといたします。」
17エンド周辺道路の立ち入り禁止は、市役所や観光協会など、観光関連の機関が集まる会議で議題に上がっていました。通行止めを発表したのは下地島空港管理事務所ですが、通行止めは、市役所や観光協会なども合意した上での判断です。
通行止めされたのは、下地島空港管理事務所が管理する空港の外周道路。空港北側の埋め立てエリアの外周1.5キロの道路です。
通行止め後の行き方
17エンドは車両通行止めとなりましたが、完全に立ち入り禁止になったわけではありません。歩いてなら入れます。
通行止め後のある日、17エンドに行ってみました。
「車両通行止め」の看板がある場所までは車で行けます。
伊良部大橋を渡って左折。車で30分ほどで通行止め地点に着きます。
下地島空港ターミナル側の通行止め地点からは絶景スポットまで1キロ以上あります。
通り池側の通行止め地点からは300メートルで絶景スポットです。
通り池側の「車両通行止め」の看板の前の道路には、たくさんの車が路駐していました。駐車場はありませんが、道路幅が広く、簡単に駐車やUターンができます。
市役所も警察も、さすがにこの車を取り締まることはなさそうです。
下地島空港の滑走路を右に、海を左に見ながら10分ほど歩くと、絶景スポットに着きます。海は、以前と変わらず美しいです。
ちょうど干潮の時間帯だったので、幻のビーチが現れていました。海と砂浜が太陽の光を受けて輝いていました。
通行止め前に比べると人の数は格段に少なく、17エンドを独り占めしたような気分になれます。
車両通行止めでアクセスは悪くなりましたが、人が少ない分17エンドの魅力は増したように感じます。
下地島のアクティビティ
下地島の魅力は17エンドだけではありません。
下地島は地形ダイビングの聖地。海底の地形が特徴的で全国のダイバーに愛されています。
中之島海岸でのシュノーケリングや、伊良部島との間にある入江でのサップなど、初心者でも楽しめるアクティビティも充実しています。
宮古島のマリンレジャーの評判、口コミはレジャー予約サイト「アソビュー」が充実しています。
下地島のアクティビティのオススメはサップとドローン撮影がセットになったsea_aidのプライベートツアー
ツアーに参加すればワンランク上の体験が待っています。
さいごに
宮古島に移住して5年。伊良部大橋開通前、フェリーで伊良部島に渡り、下地島空港周辺をドライブして、17エンドの絶景に出会った時の感動は今でも忘れられません。
当時は17エンドという呼び名も定着しておらず、観光客はほとんどいませんでした。幻のビーチとその先に広がる宮古ブルーの海を眺めるのは至福の時間でした。
17エンドの通行止めは、とても寂しいですが、安全面を考慮すれば仕方ありません。
観光客が急増する宮古島。観光客にとっても、島の人たちにとっても、安全で自然豊かな島であり続けることを願うばかりです。