2019年3月、下地島空港に旅客ターミナルが完成し、国内線LCCの定期便や国際線が飛んでいます。
宮古空港と直線距離で16キロしか離れていない下地島空港。
新ターミナルの完成を歓迎する声がある一方で、島内にはLCCや国際線の就航による観光客の急増をマイナスに捉えている人もいます。
下地島空港新ターミナルの開業は島にどのような変化をもたらすのでしょうか。
下地島空港とは?
伊良部島に隣接する下地島の西側にある下地島空港。宮古空港からは直線距離で16キロ。伊良部大橋を通れば、宮古空港から車でわずか30分ほどの距離です。
下地島空港は、パイロット養成のための訓練飛行場として1979年に完成しました。
JALやANAが頻繁に訓練を行っていましたが、2012年にJALが、2014年にANAが訓練から撤退し、今ではほとんど使われていません。
一時期、那覇と下地島を結ぶ旅客機が飛んでいた時期もありましたが、伊良部島の人たちが利用する程度で、利用者が少ないために定期便は休止となりました。
三菱地所の計画
JALとANAの訓練撤退で使われなくなった下地島空港を有効に活用しようと、空港を管理する沖縄県が2014年度に事業者を公募し、三菱地所が事業者に選ばれました。
三菱地所の計画は、下地島空港に新しい旅客ターミナルを整備し、国内線LCCや国際線の定期便を飛ばし、プライベートジェットの受け入れを目指すというもの。
水面下では国内線LCCや国際線の下地島への誘致活動が進んでいます。
三菱地所では「沖縄県・宮古諸島を国際的なリゾートへ」「空港から、リゾート、はじまる」をコンセプトにしています。
新しいターミナルをアジア各国から宮古島に観光客を受け入れる拠点とし、リゾートホテルのようなこれまでにない作りの空港にすることを目指しています。
旅客数の目標は初年度の2019年度が5万5千人、2025年度には57万人となっています。
どこに飛行機が飛ぶのか
宮古島住民にとっても、移住者にとっても、一番の関心事はどこに飛行機が飛ぶのか。移住者としては、路線次第では安く里帰りできるようになり、気軽に海外旅行に行けるかもしれません。
2019年7月時点で就航済の路線、就航が決まっている路線は国内線2路線、国際線1路線です。
・ジェットスター 成田―下地島便
・ジェットスター 関西―下地島便
・香港エクスプレス 香港―下地島便
成田―下地島便は3月30日から週4往復。
関西―下地島便は7月3日から週4往復。
香港―下地島便は7月19日から週3往復。
宮古島の観光関係者、三菱地所の人、通訳として働く人の話を参考に、今後の就航路線を予想しました。
国内線LCC
△ 神戸―下地島 20% スカイマーク
△ 北九州―下地島 10% SFJ(スターフライヤー)
△ 静岡―下地島 10% FDA(フジドリームエアライン)
× 羽田―下地島 0%
× 那覇―下地島 0%
(競馬の予想みたいですみません)
神戸―下地島。神戸空港を拠点とするスカイマークは2015年まで、那覇―宮古を飛ばしていました。経営難で撤退しましたが、2020年に増便の計画があり、下地島も候補に入っているようです。ジェットスターが関西―下地島便を飛ばすので可能性は高くありませんが、将来的に神戸―下地島便が飛んでも不思議ではありません。
北九州―下地島。福岡じゃなくて北九州?と私も思いました。北九州空港を拠点とするSFJ(スターフライヤー)が下地島への就航を検討していたようです。可能性は低いですが、大穴で北九州―下地島もあり得ます。
静岡―下地島。静岡空港を拠点にするFDA(フジドリームエアライン)は毎年冬に宮古空港に不定期のツアー便を飛ばしています。下地島への定期便就航となるとハードルは高いですが、チャーター便を下地島に飛ばす可能性は十分あります。
那覇空港は発着枠が限られていて新規路線開設はかなり厳しく、那覇―下地島は0%です。三菱地所も那覇―下地島を飛ばすことははじめから想定していません。
羽田空港はLCCの発着枠がありません。スカイマークは羽田からも飛んでいますが、貴重な羽田の発着枠を下地島にあてることはあり得ないので0%です。
国際線
○ 台北-下地島 50% チャイナエアライン
△ 韓国-下地島 30% 大韓航空
三菱地所はアジア以外からの国際線は想定していません。可能性があるのは台湾、香港、中国、韓国。
チャイナエアラインが台北―石垣を飛ばしているので、すぐに可能性があるとすればこの路線でしょうか。就航が決まった香港エキスプレスも、台北-石垣便が就航しています。
島内には様々な噂があります。台湾のあるLCC運航会社が就航を打診したものの、あまりの格安料金設定に「リゾート空港」を目指す三菱地所が断ったという噂もあります。
国際線を飛ばすとすれば海外の航空会社です。国内のLCCが下地島から国際線を飛ばすことはあり得ません。
例えばバニラエアやジェットスターが成田空港から国際線を飛ばしていますが、これは成田空港に拠点があるからできることです。海外まで飛んでも、飛行機は夜には必ず成田に戻ってきて整備されます。下地島には拠点空港としての機能がないので、国内のLCCが下地島から国際線を飛ばす可能性は0%です。
新ターミナルの魅力
下地島空港新ターミナルは、ターミナルそのものが観光資源として期待されています。「空港からリゾートはじまる」をコンセプトに作られたターミナルは開放感があり、リゾートホテルにいるような居心地の良さがあります。
チェックインカウンターのあるチェックイン棟には、土産物店やカフェスペースが設けられ、飛行機を利用しない人たちも、お土産を購入でき、カフェメニューを楽しめます。
保安検査場の先にあるラウンジ棟もリゾートホテルのような癒しの空間。ソファやテーブルがゆとりをもって配置されています。ラウンジ棟全体がイートインスペースのようになっていて、宮古そばや宮古牛カレーなど、宮古島の郷土料理をゆったりとした気分で楽しむことができます。
ラウンジ棟の先は、国内線LCCの搭乗口、国際線の搭乗口に分かれています。搭乗口前の待合室にもソファが配置され、リゾートホテルのフロントのような雰囲気です。
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ラウンジ棟の外には、庭園があり、南国のリゾート感を演出しています。ターミナルの内装はぬくもりを感じる落ち着いた雰囲気で、飛行機に乗る直前まで、リゾート気分を味わうことができます。
唯一心配なのは、台風。宮古島の台風は本土とは比べ物にならないほど強いです。暴風警報が発表されるレベルの台風が毎年3~4つ接近します。
下地島空港は海辺に面しているため宮古空港に比べると普段から風が強く吹きます。宮古空港では、暴風警報発表で全便欠航になることが多いので、下地島空港でも台風接近の前後は欠航便が多く出ることが予測されます。
宮古島から下地島空港へは、伊良部大橋を通って行きます。暴風警報が発表されている間は伊良部大橋は通行止めとなります。風が弱まっても、警報が解除されるまでは宮古島のホテルから下地島へは行けません。
宮古島に安く行く方法
宮古島に安く行く一番の方法は、ジェットスターの直行便とホテルがセットになったツアー旅行です。
ホテル業者は一般の宿泊客よりも安くツアー会社に部屋を提供しています。ツアー旅行は航空券とホテルを別々に手配するよりも安いです。
HISのツアーなら3万円台から宮古島旅行が楽しめます。
宮古島の未来はどうなる
下地島空港の旅客数の目標は2019年が5万5千人。2025年が57万人。
1日あたりの旅客数で計算すると2019年は150人。2025年は1500人です。
宮古空港の2017年の旅客数は166万人。下地島空港が軌道に乗っても、宮古空港が中心であることは間違いありません。
ただ、下地島空港の利用者は宮古空港に比べ圧倒的に観光客が多いはずなので、観光へのインパクトは大きなものがありそうです。
下地島のエメラルドグリーンの海に囲まれた滑走路に着陸できるというだけでも、大きな観光資源です。空港のターミナル自体がリゾート空間なら、爆発的に人気が出る可能性もあります。
宮古空港と羽田や関空を結ぶJALやANAの直行便はライバルがないためセール期間でもかなり価格が高いですが、LCCの成田―下地島、関西―下地島が飛ぶようになれば、価格競争も促されるはずです。
ここ数年、宮古島は、中国・台湾からのクルーズ船が急増しています。アジア各国の宮古島への注目度は年々高くなっているので、数年後にはアジアからの国際線就航も実現するでしょう。
下地島空港は大きな可能性を秘めています。
下地島空港開港の効果を見越して、伊良部大橋と下地島を結ぶ海岸道路沿いの土地の価格は高騰し、サトウキビ畑しかなかった場所に次々とリゾートホテルが建設されています。
宮古島の未来を想像する上で参考になるのは石垣島です。石垣空港には成田からバニラエアが、関西からピーチが飛んでいます。台湾、香港からの定期便も就航しています。
石垣島では宮古島以上に観光開発が進んでいます。町中には人も車も多く。渋滞も多いです。
観光客の増加で島の経済が活性化している部分もありますが「沖縄の離島ののんびりしたイメージ」はどんどん失われつつあります。
宮古島も石垣島のようになってしまうのか。
下地島空港が開港し、観光客がさらに増えれば、宮古島も「ゆっくりと時間が流れる沖縄の離島」とはかけ離れた島になってしまうかもしれません。
下地島空港の開港で、宮古島の未来はどうなるのか。スローライフに憧れて宮古島にやってきた移住者にとっても、避けては通れないテーマです。