伊良部大橋が開通してから観光客が急増していた宮古島・伊良部島の絶景スポット三角点が立ち入り禁止になりました。
三角点は断崖絶壁の崖上の絶景スポット。以前から危険性が指摘されていました。
宮古島のお偉いさんが集まる会議で立ち入り禁止が決まり2021年2月に立ち入り禁止の看板が設置されました。
三角点とは
三角点は伊良部島の北側にある断崖絶壁の展望スポット。
海抜70メートルの断崖絶壁にあり、伊良部島の北海岸を一望できます。
三角点の前方にはどこまでも続く青い海。両サイドには断崖絶壁の入り組んだ海岸線が続きます。
断崖絶壁の真下の海はエメラルドグリーンに輝き、ウミガメが見えるスポットとしても人気です。
伊良部島の一周道路沿いにあり、知る人ぞ知る穴場スポットでしたが、SNS効果で知名度が一気に高まってしまいました。
道路にレンタカーを路駐して三角点を訪れる観光客が急増していました。
宮古島移住者の私は宮古島・伊良部島の海は見尽くしましたが、三角点からの絶景はトップクラスで美しいです。
立ち入り禁止になったのはなぜ?
三角点があるのは、宮古島と伊良部大橋でつながる伊良部島
伊良部大橋がかかるまで、伊良部島には船でしか行けませんでした。
宮古島がバブルと騒がれる前、宮古島の観光客は年間約40万人。
わざわざ船に乗って伊良部島に行くのは、宮古島の観光客の1割ぐらい。伊良部島の年間観光客数は5万人ほどでした。
宮古島以上に静かな島時間が流れ、手つかずの自然が残っていた伊良部島。
三角点の存在は伊良部島の人たちにもほとんど知られていませんでした。宮古島の人はほぼ誰も知りませんでした。
伊良部島の数少ない観光客をこっそり三角点に案内していたのが、地元のタクシードライバー。
伊良部島の船着き場近くにタクシー乗り場がありました。伊良部島のタクシーは2時間5千円ぐらいで伊良部島の観光名所を案内していました。
どの観光スポットに行くかはドライバー次第。
牧山展望台・佐和田の浜・渡口の浜など定番絶景スポットを案内するドライバーが多かったですが、穴場スポットに案内してくれるドライバーもいました。
島の人たちも三角点の存在を知らなかった時代。
三角点に近い道路沿いにはポツンと1台タクシーが止まっていました。
【三角点の入り口】
三角点は断崖絶壁の崖上のワイルドな観光スポットですが、完全に手つかずというわけではありません。
三角点にたどりつくまでには生い茂る木々をかきわけ、でこぼこ道を進みます。崖の先端に人が3人ぐらい立てるぐらいのスペースがあります。
この場所だけ木々が生えていないので、誰かが海を見るために木々を伐採したはずです。
2015年に宮古島と伊良部島をつなぐ伊良部大橋が開通。
宮古島の観光客はほぼ100%伊良部島にも渡るようになりました。
伊良部島の観光客数は10倍に。
2018年には宮古島の年間観光客が114万人超え。
伊良部島にも年間100万人を超える観光客が入るようになりました。
人の出入りが激しくなるにつれ、知る人ぞ知る穴場スポットだった三角点の存在がSNSで拡散され始めました。
三角点からの風景は迫力満点。「インスタ映え」時代の波に乗り、三角点の写真が若い観光客のSNSに溢れるようになりました。
三角点への行き方を解説するサイトが登場し、三角点を訪れる人が急増しました。
三角点は、島の人たちに知られるよりも前に、観光客に知られるようになりました。
宮古島の人たちは今でも三角点の場所を知りませんが、観光客は行き方をネットで調べて悪気なく三角点を訪れ、インスタ映え写真をバシバシ投稿しています。
三角点の知名度が高まるにつれ、危険性を指摘する声が出始めました。
2018年頃、宮古島市が注意を呼びかける看板を設置しました。看板は一周道路から三角点へと向かうでこぼこ道の中に設置されました。
「絶壁先端付近での危険行為は絶対に行わないでください」
宮古島の行政は基本的にのんびりしています。観光スポットの管理にも積極的ではありません。その宮古島市が看板を設置するぐらいなので、危険度はかなり高いです。
天気が良い日はいいですが、悪天候の日の三角点はかなり危険です。
断崖絶壁の三角点は風が強く、足場が土なので雨が降るとぬかるみます。
三角点からの転落事故はありませんが、一歩間違えれば命にかかわる大惨事になりかねません。
実際に行ってみると、三角点は写真で見る以上にスリル満点のスポット。
一歩間違えれば70メートルの崖下に転落します。先端部分に立つと足がすくみます。
悪ふざけできるような雰囲気は全くありません。リアルにかなり恐いです。
三角点から100メートルの場所にある断崖絶壁のイグアナ岩も同時に立ち入り禁止になります。
三角点の立ち入り禁止が決まったのは2020年11月。2021年2月に立ち入り禁止の看板ができました。
三角点の土地は沖縄県の県有地の一部。三角点の近くは沖縄県の県立自然公園に指定されています。自然公園とは名ばかりで、周辺は木々が生い茂っています。
三角点につながるルートは1つなので、このルートをふさげば三角点には行けません。
とはいえ、ただ看板が置かれただけなので普通に入れます。
立ち入り禁止になってからも、三角点の入り口付近には毎日レンタカーが止まっています。
看板の横を素通りして中に入る観光客が後を絶たない状況です。
伊良部島在住者としては、三角点からの絶景が見えなくなるのは残念ですが「事故が起きる前に立ち入り禁止が決まって良かった」という感じです。
立入禁止を決めた人たち
伊良部島の三角点を立入禁止にしたのは、市役所の偉い人たちです。
市役所の人たちが三角点立入禁止を決めた後、宮古島市の議会で立入禁止の理由を話しています。
原文のまま掲載(宮古島市議会議事録p115〜p116)
【下地信広議員の質問】
次に、観光振興についてお伺いします。
伊良部字前里添、通称三角点とネットで検索すると出てきますけど、この断崖絶壁の下にウミガメが見える、紺碧とエメラルドグリーンのコントラストが見える場所があります。
新たな観光資源として駐車場や遊歩道を整備すれば観光の目玉になると思いますが、当局の見解をお伺いします。
【観光商工部長(楚南幸哉君)回答】
眺望がよく、断崖絶壁の眼下にウミガメを観察できる伊良部島の通称三角点は、SNSなどで話題のスポットでありますが、同時に危険な場所であると指摘もあります。
以前から立入禁止にすべきとの意見も 多くあり、今年10月の宮古島市観光実務担当者会議にて立入禁止にすべきだと問題提起がありました。
作業部会での意見を踏まえ、11月の第2回宮古島市観光推進協議会において伊良部島の通称三角点について 協議を行った結果、三角点のある地点は沖縄県立自然公園の第2種特別地域に該当するため、まずは安全面の確保を最優先に、当面は立入禁止の措置を取りたいと考えております。
コロナ禍ひっそりと
コロナ禍の2020年。宮古島・伊良部島の観光客は激減しました。
3月まで国内観光客は昨年並みでしたが、4月5月はほぼゼロ。
6月から回復し始め10月にはGoToトラベル効果でかなり回復しましたが、第3波で観光客はまた減りました。
2020年には三角点もひっそりとしていました。
2019年まではインスタグラムやツイッターに三角点の写真が溢れていましたが、あまり見かけなくなりました。
自粛ムードや旅行へのバッシングを怖がって、SNS世代の若者が宮古島旅行を満喫している写真を投稿しているのを躊躇しているのかもしれません。
コロナ禍の2021年、静かに閉鎖された三角点。
全国の宮古島ファンには「最後に行きたかった」という声が広がっています。
変わりゆく島
2015年に伊良部大橋が開通してから伊良部島は激変しています。
立ち入り禁止や取り壊された場所は三角点以外にもあります。
伊良部島と小さな橋でつながる下地島の絶景スポット17エンドは2019年に車の立ち入りが禁止に。
17エンドも三角点同様、伊良部大橋ができてからSNSで知名度が急上昇し、観光客が急増しました。
橋がかかる前は誰もいなかった17エンドには車が溢れるようになりました。
17エンドは下地島空港の外周道路。下地島空港の新旅客ターミナル開業に合わせ、2019年に沖縄県が車両立ち入り禁止措置をとりました。
今は通り池側の外周道路入り口に駐車場ができて、観光客が駐車場に車を止めて17エンドを歩いて散策するのが定番になっています。
三角点近くの展望スポット「フナウサギバナタ」は2019年に取り壊されました。
伊良部島に秋に飛んでくる渡り鳥「サシバ」をモチーフにした小さな展望スポットは、コアなファンに人気のスポットでした。
私も伊良部島に来る友人を案内していました。なかなかの珍百景で好評でした。
コンクリートが剥がれたり劣化が激しく取り壊されました。復活を望む声もありますが残念ながら再建の話はありません。
宮古島・伊良部島は2015年の伊良部大橋開通後激変しています。
交通量が急増し、リゾートホテルが乱立。下地島空港には国際線が飛び始め、2020年秋にはスカイマークも就航。
コロナで一旦は静かになりましたが今はバブル期のような騒がしさ。
まとめ
宮古島・伊良部島の絶景スポット三角点が立ち入り禁止になりました。
宮古島のお偉いさんが集まる会議で2020年11月に立ち入り禁止にすることが決まったようです。
三角点には入れなくなりましたが、立ち入り禁止の看板を素通りして中に入る人もいます。
絶景が見えなくなるのは残念ですが、転落事故が起こる前に閉鎖が決り個人的にはホッとしました。