宮古島バブルで得する本土企業・損する地元住民

沖縄の離島、宮古島。人口約5万4000人の小さな島は、今「宮古島バブル」といわれる好景気。

観光客は急増し、リゾート開発が加速。私が移住した5年前とは島の空気感も変わってきました。

宮古島バブルで得するのは、好景気の波に乗って進出してくる本土企業。地元住民には得よりも損の方が多いように感じます。

宮古島バブルによる島の変化と、利益を求める本土企業の動き、地元住民への弊害をまとめました。

島の変化

宮古島は大きな変化の時を迎えています。

2017年頃から「プチバブル」と言われるようになった宮古島。当時は伊良部大橋開通による一時的な好景気と捉えられていました。東京オリンピックが終われば、宮古島の「プチバブル」も終わるとの見方が大半でした。

ところが、宮古島経済の勢いは加速するばかり。2019年には「宮古島バブル」という言葉が定着。島内はすさまじい勢いで開発されています。

観光客が急増

宮古島の観光客数の変化です

2011年度 332,473人
2012年度 413,654人
2013年度 400,391人
2014年度 430,550人
2015年度 513,605人
2016年度 703,055人
2017年度 988,343人
(宮古島市ホームページより)

2018年度は集計中ですが、110万人突破は確実です。

東日本大震災の影響で2011年は宮古島でも観光客が落ち込みました。2012年には40万人台に回復。2015年1月に伊良部大橋が開通すると、テレビ、雑誌など多くのメディアで宮古島・伊良部島がとりあげられ、全国的な注目度が急上昇。観光客数は2015年に初めて50万人を突破しました。

2015年以降、ANAが羽田空港、関西空港、中部国際空港、福岡空港から宮古島への直行便を就航。2016年以降、海外からのクルーズ船が宮古島に寄港するようになり、外国人観光客が急増。2018年の宮古島の観光客の4割は外国人。その大半は中国人・台湾人でした。

有効求人倍率

宮古島の有効求人倍率の変化です

2016年4月 0.93倍
2017年4月 1.27倍
2018年4月 1.40倍
2018年10月 1.84倍
(ハローワーク宮古ホームページより)

宮古島の有効求人倍率は右肩上がりで推移しています。

有効求人倍率の高さは、仕事を探している人にとっては「就職しやすい」というポジティブなデータです。逆に企業にとっては有効求人倍率が高ければ高いほど、人材の確保が難しい状況です。

宮古島バブルと言われる今、宮古島の人手不足は深刻です。

バブルが始まる前から、宮古島では建設業、医療・介護、観光関連の仕事が慢性的に人手不足でした。

宮古島バブル真っただ中の2019年、建設業の人手不足はこれまでになく深刻です。加速するリゾート開発で、島内には建設現場が溢れていますが、労働力が全く足りません。島外からも多くの労働者が宮古島に入っていますが、どの現場も人手不足。人が足りないので現場の労働環境は過酷です。

リゾート開発が進む宮古島では新しいホテルが次々にオープンしています。ホテル業界の人手不足も深刻です。地元新聞には毎日のように複数のホテルの求人情報が掲載されています。住む場所を確保できない従業員のためにホテルの一室を寮として使っているところもあります。

不動産価格の高騰

宮古島の公示地価(1坪あたりの価格)の変化です

2015年 87,679円
2016年 87,484円
2017年 87,392円
2018年 89,283円
(国土交通省まとめ)

国土交通省が公表している公示地価のデータでは、宮古島の土地の価格は2017年まではほぼ横ばい。2018年に上昇に転じました。

公示地価はあくまで土地取引の目安となる価格。データには表れませんが宮古島では土地の価格が急騰している場所があります。

特に伊良部島の海沿いの土地は価格が急騰しています。伊良部大橋開通前は、サトウキビ畑しかなかった場所が、本土企業に次々に買い取られています。

買い取り価格は、バブル前の相場の5倍とも10倍とも言われています。渡口の浜に隣接する食堂の土地と建物は1億円で取引され、カフェ併設のマリンショップになりました。

市街地エリアの土地の価格も急上昇。好景気の波に乗ってアパート建設用地は高値で取引されています。

住宅地の価格も上がりはじめています。2016年頃まで、市街地の住宅用地は坪単価8万円前後でした。最近では好景気の波に乗って不動産屋が高値を設定しています。人気エリアでは坪単価10万円以上。坪単価15万円で売り出されている住宅地もあります。

得する島外企業

バブルの宮古島を狙って、島外から多くの企業が宮古島に入っています。宮古島の地元住民からすれば「外資」とも言える島外企業。本土企業だけでなく、海外の企業も利益を求めて宮古島に進出しています。

三菱地所

宮古島と橋でつながる伊良部島に隣接する下地島の西側に、宮古島第2の空港「下地島空港」があります。

かつてJALやANAのパイロット訓練養成のために活用されていた空港ですが2012年にJAL、2014年にANAが訓練から撤退。

使われなくなった下地島空港を有効活用しようと、空港を管理する沖縄県が2014年に活用案を募集し、三菱地所が事業者に選ばれました。

三菱地所の計画は下地島空港に新しい旅客ターミナルを整備し、国内線LCC、国際線の定期便を飛ばすというもの。

「空港からリゾート始まる」をコンセプトに日本初の「リゾート空港」を目指しています。新ターミナルは2019年3月30日に開業。ジェットスターの成田―下地島直行便が1日1往復就航することが決まっています。

2025年には宮古空港の利用者3分の1にあたる、年間57万人の利用を見込んでいます。

下地島空港にLCCがやってくる~どうなる宮古島の未来~
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ユニマットプレシャス

1980年代に宮古島でリゾート開発を始めたユニマットプレシャス。宮古島の南海岸線沿いに一大リゾートエリアを築きあげています。

2017年頃から開発の勢いを加速させていて、2018年に新たに2つのホテルを開業。6つのホテルを所有し、エリア内に観光温泉施設や土産物店、居酒屋を整備。観光客の囲い込みを図っています。

ユニマットプレシャスは今後5年間でさらに開発を進めます。2019年には新しいホテル3ヶ所とリゾートウェディング用の複数の結婚式場が完成予定。

2018年現在の客室数は827室ですが。2020年度末には2,000室、2024年度末には6,000室にまで増やす計画です。

ユニマットプレシャスが展開するリゾートエリア内では開発工事がいたるところで行われています。あまりの開発の勢いに、近くを通るたびに少し恐くなります。

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カーニバル社

アジア最大のクルーズ船会社「カーニバル・コーポレーション」が宮古島に進出します。

宮古島の平良港は、国土交通省の国際クルーズ拠点形成事業の拠点港に選ばれ、クルーズ船受け入れの施設整備のための予算が集中的に投下されています。

港ではこれまでより大型のクルーズ船が停泊できるようにするための工事が進んでいます。それに合わせて、岸壁の近くにカーニバル社がターミナル施設を建設します。

国債クルーズ拠点形成事業は、国とカーニバル社が連携して行うもので、岸壁完成後はカーニバル社が優先的に岸壁を利用できる契約になっています。

岸壁は2020年に完成予定。宮古島への年間のクルーズ船寄港回数は2017年には132回でしたが、2020年度には250回、2026年度には310回にまで増える計画です。

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三菱地所、ユニマットプレシャス、カーニバル社。代表的な3つの事例を紹介しましたが、宮古島ではこの他にも島外企業による土地取得とリゾート開発が盛んに行われています。

損する地元住民

宮古島はバブルと言われていますが、主に利益を上げているのは島外資本の企業。地元企業で潤っているところもありますが、島民の多くはバブルの恩恵を受けていません。

宮古島で会社員としている私にとっても、宮古島バブルは得することより損することの方が多いです。

賃貸空き物件がない

宮古島バブルの影響で、宮古島には賃貸空き物件が全くありません。宮古島在住者は引っ越したくても引っ越すことができません。

「一人暮らしのために実家を出たい」「結婚したので新居で暮らしたい」など、島外ではあたり前にできることが宮古島ではできません。

空き物件がないことに便乗し極端に高い家賃を設定する不動産屋もみられるようになってきました。

私も今住んでいるアパートを追い出されたら、住む場所を見つけられる自信はありません。島を出る以外に選択肢はなくなります。

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土地も高い、家も高い

宮古島バブルによる不動産価格の高騰は、地元住民には歓迎されない面もあります。

リゾートエリアの土地の価格が上がるのは理解できますが、それに便乗して普通の住宅地の土地価格も高めに設定されています。数年前まで坪単価8万円前後だった住宅地が15万円で売りに出されていたりします。土地購入を考える地元住民にとっては迷惑な話です。

新築住宅の建設費用はこれまでになく高騰しています。30年前の宮古島では1坪30万~40万円で家が建ちました。2015年には1坪80万円前後にまで上昇。2018年には1坪100万円を突破、2019年現在、新築住宅の建設費用は1坪110万円とも150万円とも言われています。

宮古島の家は鉄筋コンクリートがスタンダードなので、ある程度高くなるのは仕方ありませんが、今の価格は異常。3LDKの小さな平屋でも、建設に3千万円はかかります。

中古住宅も信じられないような価格設定の物件が見られます。築40年を超える物件でも土地と合わせて3千万円台で販売されているものがあります。あまりに高い価格設定の物件はさすがに売れ残る傾向にありますが、高値で取引される古い中古住宅もあるので驚きです。

土地価格が上昇すると、土地所有者の固定資産税が高くなります。伊良部大橋開通後リゾート開発が進む伊良部島は、土地価格の高騰が特に目立つエリア。宮古島バブルの影響でリゾート開発に適した海沿いだけでなく、リゾートエリアから離れた住宅地の固定資産税も高くなっています

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手つかずの自然、穏やかな暮らし

宮古島バブルによって、島の手つかずの自然と穏やかな暮らしは失われつつあります。

私が移住した5年前、宮古島は交通量が少なく、渋滞は全くありませんでした。農作業に向かうオジーの軽トラックが時速20キロで走っていても、誰も文句を言わないような空気感がありました。

宮古島バブルの到来で島の交通量は激増。特に観光バスとレンタカーが増えています。今や島の交通事故の半分近くはレンタカー絡み。ビーチや商業施設前の公道に路駐する観光バスも増え、渋滞の発生源となっています。

外国人観光客の急増で、文化や風習の違いに戸惑うこともあります。外国人観光客がトイレを汚す、ゴミを散らかす、声が大きいなど、飲食店経営者からは不満の声が絶えません。

ビーチを取り巻く環境も変わってきました。海の家がなかったマイナーなビーチにもレンタル業者が進出。複数の移動販売車が砂浜に乗り入れ、景観を阻害しているビーチもあります。

休日にビーチに行ったら、クルーズ船で宮古島に来た中国人観光客であふれていたなんてこともありました。

宮古島で加速するリゾート開発と地元住民への弊害
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まとめ

宮古島はこれまでにない好景気。観光客は増え、有効求人倍率は上昇し、不動産価格も高騰しています。

宮古島バブルで得するのは、利益を求めてやってくる島外企業。地元住民にとっては残念ながら得よりも損の方が多いです。

宮古島バブルはどこへ向かうのか。

宮古島の静かな環境に憧れて移住した私としては、いつまでもこの島の穏やかな暮らしが続くよう願うばかりです。

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