2018年10月、砂山ビーチのアーチ岩が立入禁止になりました。
写真撮影スポットとして人気の岩のアーチの前に突然現れた大きな柵。
あまりに有名な場所に無造作に設置された人工的な柵に、ただただ驚くばかり。
久しぶりに行った砂山ビーチには、このほかにも残念な変化がありました。
急増する観光客。加速する開発。変わりゆく海。
砂山ビーチひとつをとっても、私が移住した5年前とはだいぶ様子が変わってきました。
中国人観光客が急増
2018年10月10日。お昼に砂山ビーチへ。
駐車場に入る前から、異変。
なんだこのタクシーの数は!?
タクシーとレンタカーで駐車場は満車。
タクシーの列が駐車場の外にまで伸びていました。
ビーチへと続く道の入り口は、ジャンボタクシーがふさいでいます。
タクシーの間をすり抜け、砂の山を上ってビーチを目指します。
すれ違うのはほとんど中国人観光客。
中国人観光客は、クルーズ船で宮古島にやってきます。2016年から急増しているクルーズ船。多い時には4000人の観光客を運んできます。
クルーズ船が入る日は、バスもタクシーもフル稼働。宮古島の住民が日常生活でタクシーを使えないほど、タクシー不足は深刻です。
この日の砂山ビーチは、タクシーでやってきた中国人観光客で埋め尽くされていました。静かな宮古島の海に、大きなボリュームで中国語の会話がこだまします。携帯用のスピーカーを持ってきて、スピーカーから爆音で音楽を流している人もいます。
ざっとビーチを眺めただけでも、50人ほどは中国人観光客がいました。私が移住した5年前、10月にもなれば、砂山ビーチはほぼ独り占め状態で楽しめたのに・・・
中国人観光客が溢れるビーチで、日本人観光客は控えめに写真を撮っていました。
突然現れた立入禁止区域
砂の山をのぼりきると、視界に広がる美しい海。
砂山ビーチならではの、他にはない絶景です。
ビーチに向かって坂を下っている時の気分は最高。
「美しい海が私を待っている」
帰りに坂を登るつらさなど全く頭をよぎりません。
いつものように、砂浜にむかって坂をかけおりる。
坂を下り、砂山ビーチの名物、岩のアーチに目線をうつしたところで、大きな違和感。
アーチの下に大きな柵が設置され、立ち入り禁止になっていました。
宮古島の中でもトップクラスのインスタ映えスポット。アーチの下には、鉄パイクの柵が設けられ、網がはられて中に入れないようになっています。柵にかけられた看板には「立入禁止区域」の文字。
「アーチ状の岩は落石や崩落の危険が有りますので、これより先は立ち入り禁止致します」と書かれています。
岩のアーチの裏側は、岩が落ちないように金網で補強されています。確かに、アーチの裏側をよく見てみると、今にも落ちそうな岩があります。
立入禁止区域が設けられる直前、宮古島には2週続けて台風が接近しました。台風でアーチの浸食が進んだのでしょうか。落石を防ぐための金網も一部はがれていて、危険な状態です。
とても画になる写真撮影スポットですが、人物込みで写真を撮ろうとすると、どう頑張っても柵が映ってしまいます。
夕日スポットとしても有名な砂山ビーチ。
アーチ越しに見る、海に沈む夕日は、砂山ビーチにしかない絶景でした。
もうこんな写真は撮れません。
絶景の岩のアーチに突然現れた人工的な柵。
とても残念ですが、安全第一を考えれば、仕方ないのかもしれません。
違法業者の撤去
ほとんど知られていませんが、砂山ビーチは実は私有地です。砂山ビーチを所有するのは、株式会社宮古島砂山リゾート。ビーチを管理しているのは宮古島市役所です。
株式会社宮古島砂山リゾートは、このエリアのリゾート開発のため、10年以上前に土地を取得しました。資金繰りが悪くなり、開発計画は保留のままとなっています。
アーチの前に設置された看板には「無断侵入により発生した怪我・事故については、土地所有者及びビーチ管理者は一切の責任を負いかねます」とあります。
土地所有者には「宮古島砂山リゾート」ビーチ管理者には「宮古島市役所観光商工部観光課」と記されています。
砂山ビーチにはこんな看板も設置されました。
看板には「ここは私有地です ビーチでの遊泳、釣り、観光目的以外の方の通行は認められません。本私有地の所有者の許可を得ずに、物販・レンタルその他営利目的で本私有地を通行することは固くお断りします。無断で使用した場合、不法侵入として刑事告発を行います」とあります。
所有者の欄にはやはり「株式会社宮古島砂山リゾート」と記され、連絡先として東京の法律事務所の電話番号が掲載されています。
砂山ビーチでは「株式会社宮古島砂山リゾート」とは異なる業者が、砂浜で不法にパラソルの貸し出しや飲食物の販売を行い、問題視されていました。
違法業者が居座っているのは、砂山ビーチの岩のアーチの左側にあるくぼみ。テーブルやいすを設置し、大量のパラソルやクーラーボックスを持ち込んでいました。
この業者の撤去に、ビーチの所有者と管理者が動き出しました。立入禁止の柵は、岩のアーチの前だけでなく、業者が居座る岩のくぼみの前にも設置されました。
私が砂山ビーチを訪れた10月10日。違法業者は荷物をまとめて出ていく準備をしていました。
パラソル、クーラーボックス、机、いす、サーフボード、大量のゴミ。無許可で保管されていたたくさんのものが、運び出されていました。
この場所で営業しているのは、普段は男性1人。この日は5人ほどが手伝いに来ていました。ビーチの入り口付近の車が入ってはいけない場所に軽トラックが止められ、運び出された荷物が積みこまれました。
荷物は荷台に積みきらないほど大量。運び出しは夕方まで続きました。
ビーチの所有者が注意喚起の看板を設置したタイミングで、違法業者が立ち退いたので、所有者(株式会社宮古島砂山リゾート)や管理者(宮古島市役所)の圧力がかかったのは間違いありません。
違法業者の存在は問題視されていましたが、パラソルの貸し出しをありがたく感じている観光客も一部いました。業者の男性がビーチで溺れかけた人をサーフボードで助けたこともありました。
しかし、違法業者であることは間違いありません。パラソルの貸し出しを行い、水難事故のリスクが高い砂山ビーチを海水浴場のような雰囲気にしていること自体、問題だったとも言えます。
業者は10年以上この場所で営業していました。今回の立ち退きは一時的なもので、ほとぼりが冷めれば戻ってくる可能性もあります。日本を代表するリゾート地として、観光客を迎え入れる側のモラルが問われています。
中国人観光客の急増。立入禁止区域の設置。違法業者の撤去。
砂山ビーチひとつをみても、宮古島が変化の時を迎えていることがよくわかります。
心静まる宮古島の癒しの海は、少しずつ失われています。
急増する観光客。加速する開発・・・宮古島はどこへ向かうのか。
いつまでもこの島の穏やかな暮らしが続くよう、願うばかりです。
2022年追記 砂山ビーチ周辺の大規模リゾート開発計画が明らかになりました。数年後ホテル宿泊者以外は砂山ビーチに入れなくなるかもしれません。
詳しくはこちら。砂山ビーチのリゾート開発ついに始動。