これまでにない好景気の宮古島。島内では「宮古島バブル」という言葉が定着しつつあります。
5年前に年間40万人台だった観光客は100万人を突破。有効求人倍率は1.8倍を超えました。
バブルの波に乗って、宮古島では移住者が急増しています。特に増えているのがホテル従業員、建設業の労働者、居酒屋やキャバクラで働く女性などの単身移住者。
年々減り続けていた宮古島の人口は、移住者の増加で上昇に転じました。
宮古島バブルで急増する移住者。その先に、明るい未来は待っているのでしょうか。
移住者の数はどれぐらい?
宮古島市の人口は昭和30年頃をピークに減り続けています。国勢調査のデータでは宮古島の人口は昭和30年には約7万人でしたが、2018年は約5万4000人です。
年々減少が続いていた宮古島の人口は、2017年に上昇に転じました。
移住者の数の統計データはありませんが、転入人口から推測することができます。
宮古島市への転入者の数(1日あたり)
2013年 6.3人
2014年 6.3人
2015年 6.8人
2016年 7.5人
(宮古島市ホームページより)
データが公表されているのは2016年まで。転入者の数は年々増えています。
転入人口には宮古島出身で島に帰ってきた人も含まれます。宮古島に引っ越した人でも、宮古島市に住民票を移していない人は含まれません。
2016年の1日あたりの転入者数は7.5人。年間の転入者数は約2700人。転入者の4割が移住者だとすると、毎年約1000人が宮古島に移住していることになります。
転入者は増えていますが、転出者は横ばいです。
宮古島市からの転出者数(1日あたり)
2013年 7.0人
2014年 6.8人
2015年 7.1人
2016年 6.9人
2015年までは転出者が転入者を上回っていましたが。2016年に逆転しました。
データから推測すると、宮古島に1年間に移住してくる人は少なく見積もって500人、多く見積もって1500人。
宮古島に5年住んでいる感覚では、宮古島の移住者は全人口の1割以下。移住者の数は3000人~5000人と推測されます。
歴史的に移住者は少ない
歴史的にみると、宮古島は移住者が少ない島です。石垣島に比べ移住者はかなり少ないです。
石垣島は歴史的に移住者に寛容な島です。石垣島には戦後「開拓移住」で多くの人たちが移住してきました。
「開拓移住」では沖縄本島、宮古島、県外から多くの人が島にやってきました。開拓移住で、島に住む人の半分は移住者になりました。
宮古島には「開拓移住」のような歴史はありません。宮古島に住む人の9割は宮古島にルーツを持つ人たちです。
宮古島にルーツがあるかどうかは名字をみればわかります。砂川、友利、平良など、宮古島にルーツがある人たちの名字は本土とは違います。
宮古島の小学生の9割は宮古島にルーツのある名字です。
移住者に厳しい島
5年間暮らしていて感じるのは、宮古島は移住者には厳しい島だということ。
宮古島出身者にしか部屋は貸さない大家さんもいます。移住者にわからないように方言で悪口を言う人もいます。
宮古島の人たちは縄張り意識が強く、移住者に簡単には心を開いてくれません。宮古島の人たちにとって、移住者はよそ者。穏やかな暮らしを阻害する可能性がある存在です。
移住者が少なかった10年ぐらい前は、移住してくる人を「逃げてきた犯罪者ではないか」と疑う人もいたぐらいです。
外から見れば宮古島はリゾートアイランドですが、地元の人たちからすれば沖縄の辺境の小さな離島。「どうしてこんな田舎にわざわざ来るの?」という目線が向けられるのも仕方ありません。
急増する単身移住者
宮古島バブルといわれる好景気の波に乗って、宮古島には移住者が急増しています。建設業の労働者、ホテル従業員、リゾートバイトで居酒屋・キャバクラで働く女性たちです。
バブルの宮古島は、大型公共施設やリゾートホテル・アパートの建設ラッシュ。建設業の労働者は慢性的に人手不足。島外から働きに来ている人たちはとても多く、建設現場には県外ナンバーの車が多く出入りしています。
宮古島では次々にリゾートホテルがオープンしています。新規開業のホテルは人材確保に苦慮していて、島外から積極的に従業員を募集しています。
期間限定のリゾートバイトを受け入れる居酒屋やキャバクラも増えています。リゾートバイトの派遣サイトに登録し、宮古島で住み込みで働いている女性が多くいます。
単身移住は家族での移住に比べ身軽です。寮生活の場合が多いので気軽に移住できますが、気軽に帰ることもできます。宮古島の単身移住者の入れ替わりはとても激しいです。
過酷な労働現場
バブルの宮古島には仕事はありますが、どの業界も人手不足。一人あたりの仕事量が多く、労働現場からは悲鳴があがっています。
特に建設現場は過酷。夏の日差しは本土では想像できないほど強く、長時間の外での作業は身の危険を感じます。
業者は納期に間に合わなければ違約金を支払わなくてはならないので、納期内に工事を終えようと必死。その結果、労働者は昼夜を問わず働き続けることになります。
資材が来ない。働く人がいない。来ても新人ばかりで使えない。ミスが多い。外国人労働者とコミュニケーションがとれない。現場からは労働者たちの悲鳴が聞こえてきます。
ホテル業は従業員の入れ替わりがとても激しい業界。島内にはホテル従業員の求人情報が溢れていますが、人手不足が解消する兆しはまったくありません。島外からも従業員を募集していますが、全く足りない状況。仕事を覚えたと思ったら辞めていく新人も多く、労働環境は厳しくなるばかりです。
バブルのひずみ
宮古島バブルのひずみは、既に様々なところに出始めています。宮古島には賃貸空き物件が全くありません。観光客の急増で交通量が増え、交通事故も増加しています。
手つかずの自然が人気だった宮古島の海沿いには、リゾートホテルが乱立。宮古島の風景は激変しています。
バブルはいつか崩壊します。
最も懸念されているのは人手不足。島内では同時並行でリゾート開発が進んでいます。リゾート施設が全て完成した時、働き手が確保できるのかは大きな課題。働き手の確保以前に、働く人が住むアパートがありません。
外国人労働者の受け入れ
人手不足解消の唯一の希望の光は外国人労働者の受け入れ。ここ数年、宮古島では外国人労働者受け入れの動きが広がりつつあります。
リゾートホテルの中にはインターンシップという形で台湾や東南アジアから人手を確保しているところがあります。
台湾の大学が宮古島に分校を設置する話が進んでいます。実現すれば台湾の学生が宮古島で働くルートができるので、観光関係者はかなり期待しています。
今後宮古島では下地島空港の開業、クルーズ船の寄港増加でアジアからの観光客が増えていきます。
観光客も外国人。働く人も外国人。5年後の宮古島には外国人で溢れているかもしれません。
まとめ
宮古島バブルで、島内には移住者が急増しています。特に増えているのは寮に暮らす単身移住者。リゾートバイトの普及で、以前よりも気軽に宮古島に移住することもできるようになりました。
移住先として人気の宮古島ですが、島内では人手不足が深刻。「人が足りない→仕事がきつい→仕事を辞める人がいる→さらに人が足りなくなる」という悪循環に陥っているところも多いです。
仕事が溢れているので、移住のチャンスとも捉えられますが、宮古島での仕事は決して楽ではありません。南国の楽園というイメージは観光客が抱くものです。宮古島バブルの波に乗って宮古島に移住し、過酷な労働現場で酷使され、帰っていく移住者もいます。
移住者が急増する宮古島。この先に明るい未来は待っているのでしょうか。