17end通行止めを憂う~変わりゆく宮古島の海~

2019年3月23日、下地島空港17endが通行止めとなり車両の立ち入りが禁止されました。

宮古島に移住して5年、宮古島で一番海がきれいなのはどこかと聞かれれば、迷わずに17endと答えます。

どこまでも続く遠浅の海、干潟の時だけ現れる幻のビーチ、青、藍、蒼、紺、エメラルドグリーン、コバルトブルー。「青」という一言では語れない7色の海。

17end通行止めは残念でなりません。ただ、移住生活が長くなり、島の実情が見えてくると、寂しいだけでは済まされない複雑な感情が胸に押し寄せます。

観光客の急増で変わりゆく宮古島の海。下地島空港17endの通行止めは、その序章に過ぎないのかもしれません。

立ち入り禁止の理由

17endの正式名は、下地島空港外周道路。管理するのは、沖縄県の下地島空港管理事務所です。

パイロット養成訓練飛行場として整備された下地島空港。ANAとJALが訓練から撤退した後は、LCCのバニラエアやソラシドエアなどの訓練が一時期行われていただけで、空港は閑古鳥状態でした。

沖縄県が下地島空港を民間の力で再生させようと活用案を公募。選ばれたのは三菱地所の新ターミナル建設計画。下地島空港に「空港からリゾートはじまる」をコンセプトにした新ターミナルを整備し、国内線LCCと国際線を誘致するというもの。

空港は2019年3月30日に開業。これに合わせ、下地島空港17endは通行止めとなりました。

通行止めを決めたのは、17endを管理する沖縄県の下地島空港管理事務所。三菱地所が整備したのはターミナルだけで、空港自体は沖縄県のもの。下地島空港は「民間空港」と表現されますが、滑走路も、飛行機の駐機場も、管制塔も、全て沖縄県のもの。空港の外周道路「17end」を管理するのも沖縄県です。

下地島空港管理事務所は、17end通行止めの理由として、交通量が急増して接触事故が発生していること、車両の重みで道路がひび割れていることをあげています。

下地島空港に定期便が就航するようになれば、飛行機の安全航行にも影響が出かねないとして、通行止めと車両立ち入り禁止を決めました。

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17endはだれのもの

残念ながら、17endは島民のものでも、観光客のものでもありません。17endは沖縄県のものです。沖縄県が下地島空港を作らなければ17endは存在しませんでした。

下地島空港の滑走路はジャンボジェット機も離着陸できる3000メートルの長さ。滑走路の長さを確保するため、空港建設のために下地島の北側の海が埋め立てられました。

17endは下地島空港の埋め立てエリアにあたる場所。下地島空港が建設されなければ、17endは存在しませんでした。

17endの海が美しいのは、周辺の海が遠浅だから。遠浅だからこそ、干潮時に幻のビーチが現れ、遠浅だからこそ、海の色が何色にも輝きます。

地元の潮の流れに詳しい人の話では、17end建設当時は、干潮時でも幻のビーチが現れることはなかったようです。下地島空港が建設され、滑走路と外周道路が潮の流れをせき止めたことによって、17endの西側に砂が溜まり、干潮時に幻のビーチが現れるようになりました。

インターネット上には「17endはみんなのもの。宮古島の大自然の絶景を奪うな」との投稿がありますが、残念ながら17endは空港管理事務所のもの。17endの絶景は「宮古島の大自然」ではなく空港の埋め立てによってできた人工的なものです。

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変わりゆく海

宮古島バブルと言われる今、宮古島には観光客が急増しています。2013年に年間40万人台だった観光客は2018年には100万人を突破しました。

特に伊良部島、下地島の観光客は急増しています。2015年1月に伊良部大橋が開通するまでは伊良部島の観光客は年間5万人ほどでした。今では宮古島を訪れる観光客のほとんどが伊良部大橋を渡って伊良部島に入るので、伊良部島の観光客数も年間約100万人。この5年で20倍にも増えています。

観光客からすれば17endが閉鎖されるのはただただ残念なこと。下地島空港ターミナル開業に合わせて17endを通行止めにすることに批判的な意見が出るのも納得できます。

地元の観光関係者の中には、貴重な観光資源をなくすなという意見もあります。しかし、地元の人たちの感情は「残念」の一言では済まされません。

観光客が急増する宮古島では島外企業によるリゾート開発が加速。宮古島バブルと言われる今、島ではどの企業も人手不足。島に働きに来る単身移住者が急増した結果、島の賃貸アパートはどこも満室。アパート不足に便乗して家賃を値上げする大家も出てきました。

数年前までは「観光業が栄えて島が豊かになってほしい」という考え方が主流でしたが、今では「宮古島が変わっていくのがこわい」という声の方が多くなってきています。

絶景にひかれて17endに観光客が集まることにも批判的な声が出ていました。海水浴場ではない17endで海水浴やシュノーケリングを楽しむ観光客が増え、マリンレジャー業者がサップを持って進出し、観光客を連れてきてフォト撮影をする業者まで現れました。

数年前まで、幻のビーチに下りる人はいませんでしたが、あたりまえのように業者も観光客もテトラポット伝いにビーチに下りるようになりました。死亡事故は発生していませんが、浮輪で浮いていた観光客が流されるなど、水難事故も発生しています。

水難事故防止も含めて、県や市が17endを管理し、安全を確保した上で観光客に開放する方法がベストだとは思いますが、ことなかれ主義の役所が、わざわざ管理に乗り出すことはあり得ません。

17endの未来

通行止め、車両立ち入り禁止となった17endですが、歩いてなら入ることができます。通り池側の通行止めエリア入口から入れば、17endの絶景ポイントまではわずか300メートル。海と空港を眺めながら歩けば、あっという間の距離です。

駐車場があるわけではないので、路上駐車をして17endに入ることになります。17endに車の大行列が出来ていたように、観光トップシーズンには車両立ち入り禁止エリアの外側に路上駐車の車が溢れることになりかねません。

移住して間もない頃、宮古島からフェリーで伊良部島に渡り、下地島空港17endの絶景に出会った時の感動は今でも忘れられません。

どこまでも続く遠浅の海。干潮時にだけ現れる幻のビーチ。青という一言では表現しきれない輝き。

下地島空港17endの通行止めはとても寂しいですが、この島で生きて行くなら、変わりゆく島の姿を受け入れることも必要。

不満を言うのは簡単ですが、変わりゆく島の姿を短絡的に批判するような移住者の宮古島生活は長続きしません。

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